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(2)制約を共有する

 緊急事態に対処するスキームができたら、スコープ、期間、コストといった制約を共有して方針を決めます。「1次リリースは遅らせず、予算の範囲内で進める」「半年を限度に稼働時期を延ばすが、追加コストは2000万円以内とする」といった方針が固まれば検討しやすいでしょう。

 そこまで決められなくても、「変更要望を出す期限はX月Y日とする」「その後1週間で優先順位をつけて、ステコミでスコープを決定する」といった期限観とボリューム感についての枠組みを決めて合意しましょう。関係者全員が制約を認めて受け入れれば、現実的な議論ができて、プロジェクトは前に進み始めます。

(3)実現性を重視した計画を立てる

 制約を受け入れるのですから、スコープや期限の実現性に十分配慮しましょう。遅れや問題を出したプロジェクトは、無理をしがちです。「ちょっと苦しいけど、少しでも多くの要望に対応しよう」などと考えないようにしましょう。むしろ、「今後も何が起こるか分からない。どうしてもやらなければならない変更が出てくるかもしれない」と考えておくべきです。

 特に期間制約がきついのであれば、変更量を抑え込むことが肝要です。変更量が膨らめば、開発だけではなく、デグレードを含む検証工数もかさんで、品質面のリスクも出てくるからです。

発生防止策・軽減策

(1)レビューの観点とプロセスを吟味する

 工程が進むにつれて、参画するユーザーの幅が広がるのは、ある程度やむを得ないことといえます。しかし、ステークホルダーが増えるなら、マスタースケジュールや検証計画など、プロジェクトの要となる情報は、広い範囲で共有しておくべきです。

 「使い勝手」や「業務の継続性」の観点で、誰がいつレビューするのかといったプロセスも吟味して、共有しておくようにします。要件定義フェーズで情報システム部門がレビューするなら、「情報システム部門はレビュアーとして適切か」「レビューできない観点があるなら、誰がいつどうやってフォローするのか」を明確にしておきましょう。

 対面レビューには情報システム部門が出席するが、資料はユーザー部門にも書面レビューしてもらう、人数を絞ってユーザー部門も対面レビューに出席してもらう、といったレビュープロセスを、ユーザー部門も含めて合意しておくのです。

(2)決定(確認)スケジュールを明確にする

 検証フェーズでも、いつまでにこれでよいと決定(確認)しなければならないのか、期限を明確にします。期限の曖昧な、いわゆる「たら」スケジュールにならないようにしましょう。「見つけたら指摘する」「指摘があったら対応を検討する」というやり方では、いつまでたっても終わりが見えないことになります。

 一方で、無理のない検証・修正・再検証のスケジュールにしておく必要があります。ユーザーによる検証に無理がないように計画する。その代わり、合意した期間でユーザーは検証をやり切る、というのが基本です。

(3)ユーザーのタスクを管理する

 前項までで、ユーザーが持つ検証タスクの期限が明確になったことになります。

 次に、期限通りにタスクが進捗しているか、必要な観点で確認できているか、といった進捗管理・品質管理をきちんと実施して、遅れや問題を検知できるようにします。遅れや問題があれば、原因に応じて対策を立案実施するのがプロジェクトマネジメントですね。ユーザータスクについても、例外にせずにPDCAを回すようにしましょう。


 スコープとソリューションに関するトラブルは、違和感を放置することで拡大します。関係者の誰かが、トラブルが深刻になる前から、「パッケージ導入なのにどうして現状に固執するんだろう」「何でいつまでも変更要望が止まらないんだろう」といった違和感を抱いているはずです。

 違和感を放置して当面の進捗を稼ぐのではなく、「これは本質的な危機かもしれない」という認識を持って立ち止まること、プロジェクト全体として危機管理(対策)を検討することが重要です。そのためには、誰かの違和感をプロジェクトとして拾い上げるリスク管理の仕組みを作っておく必要があるのです。

小浜 耕己(おばま こうき)
スミセイ情報システム PMO部 統括マネージャ
小浜 耕己(おばま こうき) 住友生命保険で情報システムの開発とプロジェクト管理に従事。スミセイ情報システムに出向後、品質マネジメントシステムを担当し、全社PMOチームの立ち上げに携わる。サラリーマン稼業の傍ら小説家の顔も持つ。高校時代に書き始めて就職後にデビューした。SF、ミステリー、ホラー、ファンタジーなどフィクションの著書多数。日本SF作家クラブ会員、日本文藝家協会会員。
荘司 耕平(そうじ こうへい)
スミセイ情報システム 営業企画部
荘司 耕平(そうじ こうへい) スミセイ情報システムでプロジェクトマネジメントに携わったのち営業企画部門に異動。これまでの開発・PM経験を活かし、商品開発やR&Dに参画する。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャなどの高度試験から技術系、ビジネス系など広分野の資格を持ち、JGS研究会リーダーなどのコミュニティでも活躍。元プロミュージシャンという異色の経歴を持つ。