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鎮火法

(1)問題を認識・共有する

 まず、発生した事態を冷静に分析します。分析の観点は、起こっていることが、プロジェクトの課題として検討すべき通常の改善要望や要求事項にすぎないのか、パワハラなどの要素が含まれているのかです。

 例えば、精神的な攻撃が単独で行われることは多くありません。多くの場合、それは改善のための要求事項として持ち出されます。例えば、プロジェクトをうまく進めるために指摘する、という文脈の中で、相手のスキルや態度、人格などを攻撃する形です。攻撃する側にも、強い攻撃の自覚はないかもしれません。

 だとしても、攻撃を受ける側や周囲のメンバーが威圧や恐怖を感じて、業務遂行に支障をきたすとしたら、看過できません。解決すべき改善要望や要求事項として扱うのではなく、職場環境の悪化という別の問題として捉える必要が出てきます。

 複数のステークホルダーが参画するプロジェクトでは、あつれきは避けられません。いったんは感情的な言葉の応酬があったとしても、すぐに沈静化して、当事者同士が建設的な話し合いに戻れるようなら、問題視する必要はないかもしれません。

 「修羅場慣れ」した人同士が、今にもつかみ合いになりそうな応酬をしながら、数分後には和やかに談笑して落としどころを見つけていることもあるでしょう。それならば、通常のコンフリクトマネジメントの枠組みで捉えることができます(図2)。一方、さほど悪気がない言葉でも、一方的に人格を攻撃されたと受け取って萎縮してしまうメンバーもいます。

図2●ハラスメントとコンフリクトの違いを理解して対応を考える
図2●ハラスメントとコンフリクトの違いを理解して対応を考える
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 一過性で無害のものなのか、プロジェクトの人間関係や職場環境を悪化させる問題なのか、といったことをまず判断するとともに、改善の前提として関係者や管理者で共有する必要があるでしょう。

(2)当事者の話を聞く

 判断がつかない場合には、当事者の話をよく聞くことです。「これぐらいの圧力は、この仕事では当然のことだ」などと、自分の経験や性格から決めつけてはいけません。職場環境の悪化は、その職場の構成員の認識によるわけですから、あなたにとってささいなことであったとしても、本人や周囲のメンバーが感じる威圧感や恐怖が、正常な能力発揮を妨げているのだとしたら、それは解決すべき問題なのです。

(3)改善方法を協議する

 職場環境の問題だと認識したら、管理者間で改善方法を協議します。ポイントは2つあります。

 1つ目は、攻撃や論争の当事者同士で協議しないということです。通常のプロジェクト課題検討とは違って、職場環境の問題を協議するのですから、職場を代表する部門長や、会社を代表する担当役員が参画し、冷静に事情を説明できるPMや営業担当者を交えるのが適切でしょう。当事者同士で話し合いをさせたりしては、対立と環境悪化を助長するだけです。

 2つ目は、問題を明確に区別して優先順位を決めることです。例えば、「設計会議が攻撃的に雰囲気になって、設計検討が正常に進められない」と問題を定義したなら、まずはその対策の検討に徹することです。

 「感情的にしこりのある当事者を交代させる」「部長がファシリテーターとして参画して、攻撃的ムードにストップをかける」といった対策をとるのはよいでしょう。しかし、「説明の仕方にまずい点もあったので、PLの業務スキルを上げるために資料を読み込ませる」といった別の要素を混ぜ込んではいけません。それは、要求事項に対する課題検討であって、職場環境維持の問題とは無関係だからです。

 同様に、ハラスメント行為に関する処罰なども、ここでは協議の枠組みに入れるべきではありません。それは、雇用主が会社のルールに従って検討すべきことだからです。