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トラブルの要因

 もともと、プロジェクトには多様なステークホルダーがいるものです。発注する立場のユーザー企業とシステムベンダーであったり、利用部門と企画部門、情報システム部門が分かれていたり、といった具合です。

 組織が異なれば、立場や目的の違いが出てきます。ユーザー企業は、なるべくコストをかけずに有用な仕組みを手に入れたいと考えるでしょうし、ベンダーは、営利企業である以上、適切な利潤を上げたいと願っているはずです。時としてあつれきが生じるのも仕方のないことです(図3)。

図3●立場の違いによる言動から相互に疑心暗鬼に陥る
図3●立場の違いによる言動から相互に疑心暗鬼に陥る
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 ただし、相互に疑心暗鬼に陥ってプロジェクトが空中分解してしまうのは、どちらの組織にとっても好ましくありません。立場の違いは違いとして、Win-Winの結果を生むという共通目的に向かえるよう、対立関係をリセットする必要が出てきます。

鎮火法

(1)役割合意を再確認する

 信頼関係が崩壊するまでに対立が激化すると、お互いに極論が出やすくなります。「ユーザーは理不尽なわがままばかり言う」「ベンダーはお金を取ることしか考えていない」といった、一方的な決めつけになるということです。もともとの組織利益に違いがあるために、危機的事態でリスクを相互に転嫁しようとして予防線を張り合った結果、ますます、「自組織の都合しか考えていない」と捉えられる発言が多くなり、疑心暗鬼が拡大進行する悪循環に陥りがちです。

 しかし冷静に考えれば、両者とも、「自組織の都合」だけ考えていては、危機を乗り切れないのです。疑心暗鬼を解消するために、相互の立場と役割を再確認しましょう。「ベンダーは、プロジェクトを軟着陸させるための実現可能な手段・計画を提案する」「ユーザーは、立て直しのためのスコープ調整や納期調整に協力する」といった立場と役割です。

 このケースでは、ユーザーは「有効な提案をしてくれと何度も頼んでいる」と主張しています。しかし、にもかかわらずベンダーが適切な提案をしないのだとしたら、単に怠惰だとか強欲だとかというだけでない理由があるのかもしれません。

 例えば、「立て直しの提案をしてくれ。ただし、納期もスケジュールも予算も調整の余地がない」というのがユーザーの要求だとしたら、ベンダーも応えようがありません。実現性の観点から、できること、できないことがあるのは当然のことです。

 できそうにないことを「やれ」と要求することは、建設的ではありません。いくぶん留飲は下がるかもしれませんが、解決策にはなっていないのです。問題を先送りにすれば、ダメージが大きくなるだけです。

 開発側は開発側で、「できない」と言い続けることは建設的ではありません。プロジェクトマネジメント義務を負う立場からすると、「できない」ではなく、「こうしたらできる」という提案をして、利用側を説得する必要があることは明らかです。

 修復不能なほど信頼関係が崩壊していて、法廷で争うしかないという局面なら別ですが、そうしたくないのなら、相互に相手の立場を尊重して歩み寄るしかありません。譲れない部分について妥協しろとは言いませんが、「プロジェクトのために果たすべき役割」は、もともと両者にあるはずです。そこを再確認することから始めましょう。