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(2)立て直し方針を合意する

 信頼関係が崩れ始めているとき、プロジェクトは立て直しが必要になっていることが多いものです。立て直しは、単なる進め方の改善ではありません。水をかけて火を消す「消火」ではなくて、既存の建物を壊して延焼を食い止める「破壊消防」なのです。既決事項を壊すわけですから、当然痛みを伴います。

 立て直しの局面では、納期を優先するのか、スコープを優先するのか、追加コストは容認するのか、といった厳しい決断を迫られます。「コストをかけてでも納期を守る」「一部機能を諦めてもリリースを早める」「品質リスクを容認してテスト計画を見直し、検証期間を圧縮する」といったシビアな方針を決めて合意する覚悟がなければ、炎上プロジェクトの立て直しなどできるものではありません。

 崩れが起こっている場合には、前提としての方針合意が必須です。

(3)コミュニケーション強化策を講じる

 役割と方針に合意したら、また疑心暗鬼や相互不信に陥らないように、コミュニケーションを強化します。方針に従って誰がいつ、何をしなければならないのか、それはなぜなのか、といったことを確実に共有して、プロジェクトの合意を得るようにしましょう。

 原点に立ち返って、「基本サービス品質」などの定義を参考にするのもよいでしょう(図4)。プロジェクト運営を決める会議体を新設したり、既存会議の進め方や頻度を見直すなどして、二度とコミュニケーションの食い違いを起こさないようにしましょう。

図4●サービス品質を意識したコミュニケーションで関係を改善する
図4●サービス品質を意識したコミュニケーションで関係を改善する
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発生防止策・軽減策

 鎮火法と同様のことをあらかじめ実施できていれば、そもそも炎上はなかったかもしれません。キックオフ時から、プロジェクト憲章などの形でプロジェクト方針を明確にして合意するとともに、プロジェクトを進める上での役割を合意しておきましょう。スケジュール変更などの変動に際しては、「対立する個々の都合」を主張し合うのではなく、合意済みの方針と役割分担に照らしてジャッジすればよいのです。

 重要なのは、決めた方針や役割を「絵に描いた餅」にしないこと。きれいごとの建前ではなくて、決定の都度参照する規範として扱うとよいでしょう。

小浜 耕己(おばま こうき)
スミセイ情報システム PMO部 統括マネージャ
小浜 耕己(おばま こうき) 住友生命保険で情報システムの開発とプロジェクト管理に従事。スミセイ情報システムに出向後、品質マネジメントシステムを担当し、全社PMOチームの立ち上げに携わる。サラリーマン稼業の傍ら小説家の顔も持つ。高校時代に書き始めて就職後にデビューした。SF、ミステリー、ホラー、ファンタジーなどフィクションの著書多数。日本SF作家クラブ会員、日本文藝家協会会員。
荘司 耕平(そうじ こうへい)
スミセイ情報システム 営業企画部
荘司 耕平(そうじ こうへい) スミセイ情報システムでプロジェクトマネジメントに携わったのち営業企画部門に異動。これまでの開発・PM経験を活かし、商品開発やR&Dに参画する。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャなどの高度試験から技術系、ビジネス系など広分野の資格を持ち、JGS研究会リーダーなどのコミュニティでも活躍。元プロミュージシャンという異色の経歴を持つ。