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 総務領域のPLである友野竜輝が、口を開いた。

「忙しいんですよ。隈本さん、基盤リーダーも兼ねてるから。今、開発環境の打ち合わせで、客先に行ってます。ランドスケープの件でモメてるんです」

 城野課長はため息をついた。

「開発環境が大事で、コストに関わる話だってことは分かってるけど、まずマスタースケジュールを合意しないと話にならないでしょう?」

 大木が、肩をすくめる。

「それはそうなんですけど、先方の責任者の横井課長が、今は開発環境のことで頭がいっぱいになっちゃってて他の話を聞こうとしないんです。まだ開発環境もできていないのに、検証スケジュールなんか合意できるかって、昨日の進捗会議でも大変な剣幕でした」

 城野課長は顔をしかめた。

「その進捗会議に黒田部長は出席されていないの?」

「出ておられません。そもそも、黒田さんは体制図には入ってないんです」

 城野は左右に首を振った。

「お客さんのほうの役割分担もうまくいってないのね。だからこそ、PMの隈本さんがプランを提示して、もうこれでいかないと間に合いませんってお客さんにはっきり申し入れるべきよ」

 大木のほうは諦め顔だ。

「確かにそうなんですけど、隈本さんって、そういうタイプじゃないんですよ」

「タイプ?タイプじゃないってどういうこと?」

 いら立つ城野に向かって、大木は首を横に振った。

「お客さんにはっきり何かを申し入れたりするタイプじゃないってことです。お客様から要望があれば、とにかく真摯にそれを実現しようとする人ですから」

 城野は肩を落とした。彼女にとって先輩に当たる隈本が顧客と切った張ったするような仕事のスタイルでないことは、城野も課長として把握している。それを承知で、今回のプロジェクトのPMにアサインしたのは彼女自身なのだ。

 でも、これは仕事だ。自分の性格と合っていようといまいと、割り当てられた役割を演じるのが社会人ではないか。自分のスタイルにこだわる余裕などない。

 とはいえ隈本が不在の今、愚痴を言っても仕方がない。城野は、気を取り直して会議を進めることにした。

「とにかく、せっかく集まったんだから、隈本さんが作ったマスタースケジュール案をこの場で評価してみるしかないね。友野さん、このスケジュール案では、総務領域のユーザー受け入れテスト開始は8月になっているけど、本当にこれでスタートできそうなの?」

「さあ」

 友野は、自信なさそうに首をかしげた。

 城野は思わず声のトーンを上げた。

「さあって何?PLとして、スケジュールと納期は意識してるんでしょ」

「もちろん意識してます。でも、テスト環境のほうがケリがついてませんので、何とも」

 城野は、右手で何かを押しやるような仕草をした。

「環境以外の部分はどうなの?実装と結合テスト、それに納品準備は間に合うの?」

 友野は、相変わらず自信がなさそうだ。

「発生している障害の状況次第ですね。パフォーマンスの件と、例の階層メニューのバグが片付かないと、実装の遅れは解消しないと思います」

 城野課長は、何とか怒りを抑えて言った。

「そんなの当たり前じゃない。だから、障害対応の完了見込みを質問してるつもりなんだけど?」

 友野は瞬きした。

「どうでしょう。今日中にはめどをつけるって担当の久岡が言ってたんですが…。肝心の久岡が、定時に上がっちゃったみたいで」