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 こうした管理上の役割は、必ず文書化しておくようにしましょう。例えばPLなら、「自チームの作業に遅れが出ないように見通しを把握し、進捗上の問題を特定して対策を講じる。チーム単位に解決できそうにない事項については、PMと協議して改善に導く」といった役割定義を明記して、共有しておくのです。

 もちろん、マスタースケジュールの維持と変更時の顧客との調整・合意形成といったPMの役割、スコープの最終確定やステークホルダー間のコンフリクトの調整といった顧客責任者やプロジェクトオーナーの役割も、文書化し合意しておきます。個々のメンバーの管理上の責任も明記しておくのがベターでしょう。

(2)会議体を定義する

 役割定義ができたら、合意形成の場である会議体をデザインします。ステアリングコミッティーや進捗会議といった会議の名称を決めるだけではなく、その場でどんな情報を共有して、どんなことを決めるのか、会議体の機能や中身を決めていくのです。

 進捗会議であれば、遅れの原因を共有して対策を承認したり、課題の期限内解決を推進したりする場になるはずです。そのために必要な会議資料を設計しましょう。進捗報告書や課題管理一覧表など、「遅れの原因共有と対策の協議・承認」「品質評価の合意と対策の協議・承認」「課題の期限内解決推進」に適した形式を定めます。

 会議体のアジェンダを準備するか、進捗報告書のフォーマットなどを工夫して、会議の進行を可視化します。併せてファシリテーターや書記などの役割を決め、どんな順番で誰が何を説明・報告するのか、議論が迷走し始めたら誰が収拾するのか、結論と決定事項の確認をいつ、どんな形で行うのかといった運営も検討しておきます。

(3)会議体の出席者を吟味する

 定義した役割と会議の目的に照らして、会議体の出席者をよく吟味することも重要です。出席者が適切かどうかは、案外見過ごされていたり、「とりあえず関係者全員」「都合がつく人みんな」とか、安易に定められていたりする場合があるからです。

 会議は、関係者が割り当てられた役割を果たすための大事な場です。例えば、マスタースケジュールの維持と変更する場合の顧客との調整・合意形成をPMの役割として定義したのであれば、「マスタースケジュールを説明・合意する」場には当然PMが出席します。

 このように、会議の目的や議題に応じて、出席者は自然に定まるものです。逆に、会議体に関連する役割を割り当てられていない人がいたとしたら、その人は原則としてその会議に出席する必要はありません。

 出席者には、「批判ではなく代案の提示」「反対ではなく修正すべきポイントの明示」といった建設的な役割を担ってもらうことを自覚して会議に臨んでもらうといいでしょう。必要に応じて、体制図や役割定義書にも追記しておきます。アジェンダなどの会議資料に、役割定義の要約などを書き込んでおいて、出席者のリマインドを促すのもよい方法です。

 なお、体制図や役割定義、会議体は、プロジェクトのリスクやステークホルダーなどの状況を監視、分析しながら、継続的に見直すことが必要です。


 今回は、少し極端な事例として、何もかもちぐはぐな役割分担の例を設定しました。実際に、ここまでひどいプロジェクトはあまりないかもしれません。しかし、一部だけにせよ、「誰がいつまでに何をするのか」を曖昧にしたまま、よろめき進もうとするプロジェクトは少なくないはずです。

 特にマネジメントや合意形成、調整、優先順位などの決定、コンフリクトの解消といった役割は、誰も自ら拾おうとせず、責任が曖昧になることがあります。特に、余裕のない、逼迫した状況に陥った時には、この傾向が顕著になります。そして火中の栗を誰も拾わなければ、それは炎上の要因になりかねません。

 そうならないように、最初から役割定義を可視化しておいて、逼迫した状況になったときほど、誰にも役割放棄ができないようにしておくといいでしょう。

小浜 耕己(おばま こうき)
スミセイ情報システム PMO部 統括マネージャ
小浜 耕己(おばま こうき) 住友生命保険で情報システムの開発とプロジェクト管理に従事。スミセイ情報システムに出向後、品質マネジメントシステムを担当し、全社PMOチームの立ち上げに携わる。サラリーマン稼業の傍ら小説家の顔も持つ。高校時代に書き始めて就職後にデビューした。SF、ミステリー、ホラー、ファンタジーなどフィクションの著書多数。日本SF作家クラブ会員、日本文藝家協会会員。
荘司 耕平(そうじ こうへい)
スミセイ情報システム 営業企画部
荘司 耕平(そうじ こうへい) スミセイ情報システムでプロジェクトマネジメントに携わったのち営業企画部門に異動。これまでの開発・PM経験を活かし、商品開発やR&Dに参画する。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャなどの高度試験から技術系、ビジネス系など広分野の資格を持ち、JGS研究会リーダーなどのコミュニティでも活躍。元プロミュージシャンという異色の経歴を持つ。