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「誰でもできる」を真に受ける

 別のある企業では、事業部門における業務の改善活動が活発で、その一環でRPAの導入を検討していました。現場の担当者は情報システム部門に協力を依頼したのですが、「事業部門が自らの責任で進めてほしい」と断られました。想定しているRPAの適用範囲が事業部門の中だけの小規模なものであったためです。

 事業部門の担当者は普段からExcelのマクロなどを使っていたので、何とかなるだろうと考え、自分たちだけでやってみることにしました。そのほうがフットワーク良く改善活動を進められると思ったからです。

 事業部門内に作られた推進チームで検討した結果、「既存のPCだけで小規模に始められる」「画面キャプチャー機能が備わっている」「価格が安い」ことなどから、デスクトップタイプのある製品を購入しました。

 製品ベンダーの営業担当者からは「プログラミングレスで誰でも簡単にロボットを作れる」と繰り返し説明されました。このため、推進チームはベンダーが提供する有料の操作講習や、シナリオ構築支援サービスは利用することなく製品を購入しました。

 製品購入後、推進チームがロボットの作成に取り掛かかったところ、うまくいきませんでした。実は、シナリオ作成が想像以上に難しかったのです。

 この製品はPCでの操作手順をそのまま記録できたのですが、少しでも複雑な操作をさせたい場合には「詳細編集モード」でシナリオを作成する必要がありました。この点について現場の担当者は事前に知っていたのですが、この「詳細編集モード」での作業が非常に難しかったのです。スクリプト言語を記述するのとほとんど同じような作業が必要でした。

 プログラミングの経験がない事業部門の担当者には非常に難易度が高いものでした。製品ベンダーの営業担当者の「誰でも簡単にできる」という言葉を信じすぎてしまった結果です。

 推進チームは困り果て、情報システム部門に助けを求めました。しかし、もともと事業部門の意向で始めた活動であり、情報システム部門としてもサポートする余裕はありませんでした。

 結局、推進チームは自分たちでシナリオを作成することを諦め、製品ベンダーに委託してロボットを作ってもらうことにしました。こうしてロボットは完成したものの、フットワーク良く改善活動を進める狙いは崩れ去りました。新たにロボットを作る際に、いちいちベンダーに依頼しなくてはならないため、だんだん頼まなくなってしまったのです。

RPA導入に必要な5つのステップ

 大失敗とまでは言えないものの、当初意図していた通りの結果につながらなかった残念な事例を紹介しました。この2つの事例に共通する失敗の根本原因は、RPA導入の「全体計画」段階での検討が不十分だったことです。どうすればよかったのでしょうか。

 全体計画の重要ポイントに触れる前に、まずはRPA導入プロセスの一般的な流れを確認しておきましょう。図2にRPA導入の5つのステップを示します。

図2●RPAの導入の5ステップ
図2●RPAの導入の5ステップ
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 RPA導入プロセスは、大きく「準備フェーズ」と「本格導入フェーズ」に分かれます。準備フェーズには、大まかに「全体計画策定」「机上検証」「PoC(Proof of Concept:概念実証)」「評価・修正」の4つのステップがあります。

 この4つのステップを何度か繰り返してRPA導入による効果や課題などを確かめながら、計画の精度を高めていきます。そして、準備フェーズでの検証が十分確かめられた後、本格導入フェーズに進みます。いずれもRPA導入検討において欠かせないステップですが、特に重要なのがステップ1の全体計画策定です。この段階で検討が不十分なまま、何となく次のステップに進んでしまうと、上述の2つの事例のような残念な結果になりかねません。急がば回れで、最初にしっかり検討しておくことがRPA導入を成功させるポイントです。