RPAにこだわりすぎて、かえって業務が煩雑になってしまう。RPA導入プロジェクトでは、こんな例が散見される。業務の見直しやRPA以外のツール活用の可能性を検討しなかった結果だ。失敗を回避するには、現状の業務(As-Is)と導入後の姿(To-Be)を正しく描き、入念に検証する作業が欠かせない。
今回は、連載第1回で典型的な失敗パターンの1つとして取り上げた「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)にこだわりすぎる」失敗事例を紹介し、その原因について説明します。さらに、この失敗を回避してRPA導入をスムーズに進める方法として、「業務可視化」を中心に解説します。
PC操作を単純にRPA化して業務効率が悪化
ある企業では、パソコンを操作する作業を単純に自動化する方針でRPAの導入を進めました。対象部門は、ある申請書を審査する部署でした。その業務は以下のようなものです。
まず、店舗から送られてきた申請書を基に、複数のシステムを使って顧客情報や審査に必要な情報を照会。次に、その照会結果を参照しながら担当者がシステムにコメントを入力。最後に、そのコメントを確認した最終承認者が審査内容を決定します。
この業務のパソコン作業をRPAに置き換えたところ、RPAで照会した情報を担当者が確認する作業が増え、かえって煩雑になってしまいました(図1左)。作業の一部をRPAにしたことで、業務効率が悪化してしまったのです。
原因は、RPAを適用した作業と、その前後の人手の作業のつながりを事前によく検証していなかったことにあります。
RPA導入に当たっては、「RPA導入で削減できる作業時間」から「RPA導入で増える作業時間」を割り引いた「正味の削減時間」を考慮する必要があります。正味の削減時間が削減目標を上回っていなければ、効果を出せません。数式で示すとこのようなイメージです。
(削減目標時間)<(RPA導入で削減できる作業時間)-(RPA導入で増える作業時間)
この企業のケースでは、RPAの導入と業務プロセスの見直しを併用することで、導入効果を出しました。RPAで照会した情報を担当者が確認する作業を集約したのです(図1右)。