ユーザーテストや稼働を開始した後に、ロボットの品質が問題になることがある。仕様の確認漏れ、開発と本番環境の違いなど理由は様々だ。要件定義や設計・開発の工程で品質を作り込むことはもちろん、どんな分野に問題が起こりやすいのかを把握しておこう。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入について全6回に渡って連載してきました本記事も、最後となります。今回は「低品質ロボで業務が混乱」した失敗事例について紹介し、「低品質ロボ」を生み出さないためのノウハウについて解説します。
ユーザーテストで低品質が判明
RPA導入を進めていたある企業の話です。この企業のA部門では、社内の業務システムで情報を検索する処理をロボットで自動化しようとしました。具体的には以下のような作業でした。まず、ロボットがシステムに氏名を入力し、その後、画面にある「表示」ボタンを押します。するとシステムに、その人の性別や住所などの属性情報が表示されるので、ロボットがそのデータを取得します(図1)。
この一連の動作については、IT部門の開発チームがテストをきちんと実施しました。開発テストでは問題がなかったものの、A部門に引き渡してユーザーテストをしたところ、ロボットが正しく動作しませんでした。
最初はなかなか理由を特定できなかったのですが、RPAのログやロボットが処理している画面などを調査したところ原因がつかめました。業務システムが属性情報を表示し切る前に、ロボットがデータ取得を開始していたのです。業務システムの画面が遷移中なのに、ロボットが情報を取得しようとしていました。このため、ロボットは想定通りのデータを読み込むことができず、エラーを出して止まっていたのでした。
ユーザーテストの段階で問題が見つかったのは理由があります。開発環境と本番環境の違いを開発チームが意識していなかったのです。開発時にはテスト用にダミーの業務システムを使っていました。ダミーの業務システムは本番の業務システムよりも情報検索のスピードが数秒速かったのです。このため、ロボットのエラーは発生しませんでした。
これに対して、本番環境は「表示」ボタンを押してから実際に属性情報が表示されるまでが遅かったため、ロボットが情報を取得できませんでした。
開発チームはこの調査結果を受けて、ロボットの設定を変更しました。具体的には、「表示」ボタンを押してから十数秒のインターバルを設けてから、ロボットが情報を取得するようにしたのです。
月に1回の処理を見逃す
別のある企業のB部門では、別部門から届くデータを業務システムに入力する作業をロボット化することにしました。RPAの導入を主導するIT部門は、B部門の現場担当者がどのように業務を進めているのかを細かくヒアリングし、実際に業務現場を観察した上でロボットの開発を進めました。
ユーザーテストも問題なく完了し、ロボットは無事リリースされました。しかし、本番運用を始めて数日後に問題が発生しました。ロボットが止まってしまったのです。
調べたところ、毎月最初の営業日に実施する作業が行われていなかったことが原因でした(図2)。業務システムには、その月の最初の営業日のみ、月初に必要な作業の画面が表示される仕様でした。しかし、月初にいつもと違う画面が表示されても、ロボットは通常通りにデータを入力しようとしました。入力画面フォーマットが異なるため、正しく入力できません。このため、エラーになってしまったのです。