ユーザーが使いやすい良いシステムとはどのようなシステムで、どのように作ればいいのだろうか。ITエンジニアがデザインの基本を知るだけで、システムが提供する使い勝手は劇的に向上する。本連載ではITエンジニアが今すぐ実践できる、デザインのポイントを解説していく。

 ITエンジニアのみなさんは、システム構築における「デザイン」と聞くと、どのようなイメージが浮かぶでしょうか。「画面の見た目を良くすることでしょう」「関わっているプロジェクトは業務システムの開発だから、自分には関係ないかな」「デザインに力を入れる場合は、デザイン会社に外注すればいいのでは」。

 こんな声が聞こえてきそうですが、デザインは見た目を良くすることだけを指しているわけではありません。システム構築の現場でも、デザインできることがありますし、デザインをしなければいけないことがあるのです。

 本連載では、システム構築におけるデザインとは、どのようなことを行う活動なのかをひもとき、ITエンジニアが知っておくべき基礎知識と、知っているとシステムをより価値あるものにできるノウハウについて、解説していきます。まず本連載における「デザインの定義」について、説明していきましょう。

目的があるデザイン、感性のアート

 最近ではデザイン思考などの流行で、ITエンジニアにもデザインという言葉が身近になりつつあるかもしれません。とはいえデザインは、「アート(芸術)的なものであり、自分とはかけ離れた世界の話である」という考えを持つ人もいるのではないでしょうか。デザインとアートは何が違うと思いますか。両者の違いについては様々な意見がありますが、ITエンジニアの視点から考えていきましょう。

 デジタル大辞泉によると、アートは「芸術。美術」、デザインは「目的をもって具体的に立案・設計すること」とあります。両者の分かりやすい違いは、「それぞれの行為の目的は何なのか」であると言えるでしょう。アートは「行うこと」そのもの、つまり「表現する行為自体」が目的です。出来上がった作品が、他者から見て理解が難しくても、人によって感じる価値が違っても、問題ありません。作者が表現したいことが表現できていれば、目的を果たしているのです。

 一方のデザインは「何かを行う」ことが目的ではなく、「目標とする何かが出来上がること」が目的です。デザインした結果が「始めに設定された目標」を満たしていなければ、デザインの目的は果たせていないことになります(図1)。

図1●「アート」と「デザイン」の違い
図1●「アート」と「デザイン」の違い
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 デザインというとビジュアルに目が行きやすいですが、重要なのはスタートである「デザインをする目的」です。ではデザインの目的は、どのように設定するのでしょうか。