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今回は良いUXを設計する過程で実施するプロトタイプ制作とその検証作業を取り上げる。プロトタイプの制作手法は紙と鉛筆だけを使うものから、専用ツールを使うものまで幅広い。適切なタイミングで適切な手法を選択することで、課題を早期発見し、大幅な手戻りを防ぐことができる。

 前回まで、ユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインするための各フェーズを示した「JJGの5階層モデル」を基にUI(ユーザーインターフェース)のデザインについて解説してきました。戦略から骨格までの各フェーズで、システム化の目的やペルソナを策定し、情報やレイアウトのデザインを積み上げることで、デザインの具体化が進み、システムのおおまかな形が見えるようになってきました。

 そこで今回はJJGの5階層モデルを離れて、プロトタイプと検証について解説していきます(図1)。JJGの5階層モデルの最後となる「表層フェーズ」では、見た目のデザインを行います。

図1●JJGの5階層モデルに対するプロトタイプとテストのタイミング
図1●JJGの5階層モデルに対するプロトタイプとテストのタイミング
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 このまま見た目のデザインに進むことも可能ですが、表層フェーズに入ってから骨格より前のフェーズで検討した内容に問題が見つかると、さかのぼって見直すことになり、手戻りが大きくなってしまいます。見た目のデザインを実施する際には、ビジュアルデザインを専門とするデザイナーが参画することも多く、手戻りはそのままコストに跳ね返ります。

 また一般的に前のフェーズに行くほど、修正の影響は大きく、難易度は高くなります。そこで可能な場合はフェーズごとに、遅くとも見た目のデザインに入る前には、プロトタイプを制作して検証するプロセスを経るのがお勧めです。以下ではプロトタイプを実施する際の手法やタイミング、テストの仕方などについて解説していきます。

紙から専用ツールまで幅広く

 プロトタイプを作ると聞いて、システム開発では「特別なことではない」と感じた人も多いのではないでしょうか。システム開発において、要件通りに機能が実装できるかどうかを、プロトタイプを用いて検証している現場をしばしば見かけます。

 これまでJJGの5階層モデルで見てきたように、システムは戦略から積み上げて形作られています。機能や性能が要件を満たしているかどうかを検証することはもちろん重要ですが、それだけでは検証する観点としては十分ではありません。

 机上で検討してきた要件や情報構造、レイアウトが、戦略フェーズで設定したサービスのコンセプトに合致しているかどうかを検証することも、プロトタイプを作る重要な意味になります。プロトタイプと一言でいっても、制作の手軽さや再現性の度合いによって、いくつかの種類があります。以下では主なプロトタイプを紹介していきましょう(図2)。

図2●主な画面プロトタイプ制作手段とその特徴
図2●主な画面プロトタイプ制作手段とその特徴
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