今回から、効果的な資料作成をテーマに、連載をスタートする。タイトルの「勝負ドキュメント」とは、企画書や提案書といった、仕事の主要局面での成否を分ける重要なドキュメントを表すために筆者が作った用語だ。今回はその作成手法の基本原理を説明する。筆者がロジカルシンキングの進化形として整備しているもので、正式には「ストラテジックライティング」と呼んでいる。
ベースとなるロジカルシンキングは、米国の戦略コンサルティング会社に由来する情報整理の手法だ。日本語では論理思考と訳されるが、発想法や思考法ではなく、資料作成やプレゼンの手法である。
アイデアを生み出すこと以上に、それを評価してもらえるように伝える力が重要になる局面は多い。ロジカルシンキングが広く普及したのは、経営層などの意思決定者が判断しやすい資料の作成を可能にするからだ。
ただし多くのロジカルシンキングの解説書は経営企画向けのもので、技術者向けとはいえない。そこで、ITの分野で使われる情報モデリングの知識を使うことで、技術者にも理解しやすく、体系的に広く活用できるようにしたものが、ストラテジックライティングである。
情報構造をアウトラインに変換
ストラテジックライティングの特徴は、ドキュメント作成を情報構造の変換過程として捉えるところにある。基本となる3種類の情報構造を図1~3に示す。ロジカルシンキングでは、これらはいずれもロジックツリーとひとくくりで呼ばれることが多いが、性質も役割も異なる。
図1は、文書のアウトラインの構造だ。このツリー構造で表現されているのは、以下のテキストである。
当社が納入したシステムの応答が遅くなったことから改善を求められています。原因探索のために調査を行いました。
以下の調査結果から、パフォーマンス低下の原因はDBにあると考えられます。まず、ブラウザーの開発ツールで処理速度を計測し異常がないことを確認しました。また、アプリケーションサーバー上のプロセスには性能が低下しているものはありませんでした。続いてDBサーバーを調査したところ、CPU負荷の高いSQLが見つかりました。
以上のことから、性能改善のためにDBのパフォーマンスチューニングを行うことを提案します。