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 2019年4月から始まった、ロジカルシンキングを基礎とする資料作成の手法である「ストラテジックライティング」の連載はこれで最後になる。今回はこれまでの総まとめとして、分析からドキュメント骨子作成までの流れを解説する。

 本連載では様々な情報の構造と使い方を紹介してきた。論理を組み立てるピラミッドストラクチャー、目的を手段に展開するゴールツリー、問題の原因を探索する因果ネットワーク、などのツリー構造、さらに図表が表現するツリー以外の構造について紹介した。これらを整理してドキュメントの構造を組み立てることで、ロジカルで読み手にとって納得感の高い資料を作成できる。

一連の手順を1枚のシートに

 ドキュメント作成までの一連の手順を標準的な流れで進められるようにした「課題解決検討シート」を図1に示す。このシートはひな型であり、利用者や利用場面に応じて調整して使用する。シートの構造は、図2に示す基本構造を組み合わせて作られている。

図1●課題解決検討シート
図1●課題解決検討シート
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図2●課題解決検討シートを構成する基本構造
図2●課題解決検討シートを構成する基本構造
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 課題解決検討シートの一番上には検討したいテーマを示す。これは最終的にはドキュメントの表題になる。その下の結論、背景、根拠は、図2(1)の論理構造に基づく。つまり、シート中の結論が下に配置された背景と根拠の情報によって支えられる。

 背景と根拠が図2(1)のように縦にではなく横に配置されているのは、図2(2)に示す課題解決プロセスを同時に表現するためである。課題の設定までを背景とし、そこからの根拠の検討を仮説立案・検証の活動として位置づける。

 図1の背景には課題を検討するのに必要なコンテキストを示す。読んだ人に議論の余地なく合意してもらえる内容を記述する。内容には、経緯、前提、動向、用語定義など様々なものがあるが、中でも大切なのが目的である。

 目的が合意できなければその先の検討に意味がなくなるからだ。問題が起きていてその解決をするという場合はそれが目的になるので、背景として問題の構造も示す。

 目的と線でつながった根拠側の構造は、図2(3)に示すゴールツリーを構成している。課題の数は3つとは限らず、必要に応じて増減させる。多すぎると全体感が捉えられなくなるので、5項目程度を限度とし、それより増える場合はまとめて数を減らす。

 課題は「MECEX」を意識してリストアップする。MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)はロジカルシンキングの基本的な考え方で、課題項目がモレなくダブりなく洗い出されているかという意味である。

 最後の「X」は筆者が追加したものだ。「分類方針を説明できる(EXplainable)」という意味で英単語の最初の2文字を表している。これは前回説明した、「合目的性」と「分類再現性」と呼ぶ分類モデルの要件を一言で表現したものだ。

 これらの内容が埋められれば、図2(4)に示すドキュメントの骨子が出来上がる。