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 テレビで流れる中小企業向けのパッケージソフトのCMを見ると今も昔も同じようなシナリオで制作されているものが多い。いかにもITが苦手といった風情の中小企業経営者に社員や製品キャラクターが「これからの経営には○○(製品名)が不可欠です。社長、今すぐ導入のご決断を!」と迫るストーリーだ。

 このようなテレビCMは誰をターゲットに置いてこのようなストーリーにしているのか。推測するに、テレビというメディアそのものがレガシーになりつつある中でもいまだに「テレビ視聴がメイン=ITに疎い」中小企業の経営者へのメッセージ。または不特定多数の人々に企業名や製品名を覚えてもらうための広告のどちらかであろう。

 今でもテレビCMのイメージのような「ITが苦手な中小企業経営者」は少なからず存在する。しかし、その割合は年々減ってきているし、多いのは60歳代以上だ。50歳代以下の経営者では、むしろ逆にIT好きの経営者が多いようにさえ感じる。

 IT好きの社長にも2種類あって、経営者としてITの効果を評価して適切にIT導入を推進するタイプと、個人の趣味もIT寄りで最新のパソコンやタブレット、ソフトウエアを使うのがとにかく好きなタイプがある。実際に筆者が一緒に仕事をさせていただいた経営者にも両タイプがそれぞれ複数いた。

 前者の「経営のツールとしてのIT好き」の経営者は総じてバランス感覚が良く、優秀な社業を営んでいるケースが多い。このタイプは投資対効果をきちんと考えていて、その効果を実現するために単なるIT導入だけでなく、就業規則や人事制度、業務フローといったIT以外の改革も進めることをいとわない。

 一方、「個人の趣味としてIT好き」の経営者は諸刃の剣となることが少なくない。新しいもの好きで、自分が使うパソコンを毎年買い替えている程度であれば問題ないが、このタイプの経営者は往々にして基幹システムの導入時などに投資対効果を考えず、自分の興味でハイスペックなものを選びがちだ。

 イニシャルコストの範囲ならまだ影響は少ないが、ランニングコストとして毎月毎年継続して発生するライセンス料や保守費、クラウドやネットワーク費用などへ過剰投資しているとダメージはボディブローのように効いてくる。そうなるとこのタイプの経営者はIT好きなので、「コスト見直しプロジェクト」を開始するのだ。過剰コストの見直しは結構なことだが、プロジェクトを新たに立ち上げたり、製品やサービスを入れ替えたりするには当然のことながら、様々なコストがかかる。経営者や社員の時間、その時間に対して支払う給料、ベンダーやコンサルタントに支払う各種費用などだ。最初の段階できちんと調達しておけば払わなくて済んだコストが発生する。

 当たり前のことだが、経営者にとって個人の趣味と会社の投資は別物で、そこは冷静に分けて判断する必要がある。しかし、人は「好きなもの」に目がくらんでしまう。IT好きの経営者はIT業界にとってはありがたい存在なので、単にお大尽扱いせず、正しい投資や運用に導くようベンダー側も心して接したい。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO
NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長
永井 昭弘(ながい あきひろ) イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP社)がある。