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 本誌9月号の特集記事は「一生稼げるヒトになる シニアSE再充電」であった。また、日経コンピュータ8月16日号の特集は「シニアSEの現実 あなたは『戦力』か それとも『老害』か」である。少子高齢化を象徴するテーマである。筆者も50代半ばでまさにシニア世代だ。筆者の周りの先輩や同世代を見ると、現役バリバリのSEや管理職、経営者が多数いる一方で、賞味期限が切れてヘタってしまった人も少なくない。

 個人差がかなりあるが、それでも一昔前に「SE35歳定年説」がまことしやかに語られていたことを忘れてしまうくらい、今のIT業界はシニアが頑張っているのは間違いない。

 現役バリバリのシニアとお疲れ気味シニアの分かれ目は何かといえば、第一は当たり前だが「健康」である。次に大切なのは「多様な人たち」と仕事をすることだろう。

 年齢、職業、地域などが異なる人たちと仕事をすることは、実は容易ではない。まず、なかなか機会が得られないことが多いし、機会があっても慣れていないと尻込みしてしまいがちだ。だからやはりシニア自身が、貪欲に機会を求め、積極的に出ていかないと経験できない。筆者の友人のAさんはそれを実践している一人である。

 Aさんは大手IT企業に勤めること30年あまり、SEとしてスタートし、SE系と営業系の両方の仕事に携わり、SE系ライン部長として活躍した後に、55歳で役職定年となった。Aさんは役職定年後にSE系のスタッフとして会社に残ることを選択。そして希望として全国各地でセミナーを開催する部署を選び、そこのスタッフとしての仕事だけでなく、講師も兼任することになった。

 役職定年前は東京の事業所で部下を指揮する毎日であったが、新しい仕事は毎週のように全国を飛び回る。セミナーの内容はいくつも種類があり、それらに参加する受講者も多様である。IT関係者だけでなく、ユーザー企業や自治体、大学教員もいれば、一般市民や学生が受講することもある。

 ラインの部長時代は社内と取引先とのコミュニケーションがほとんどだったが、新しい仕事では相手の年齢、職業、地域などが一気に多様化した。Aさんがこの新しい部署を希望したのには理由があった。ラインの部長になる少し前に、自分の見識と人脈を広げようとある異業種交流会の活動に参加したそうだ。特に地方で開催した交流会で自分と違う仕事や生活をしている人に出会うことで、大きな刺激を受けた。

 また人だけでなく、様々な地域独特の文化風土、気候、食事を体験することも心地良かったそうだ。部長になって多忙となり、その活動ができなくなってしまった。だから役職定年をむしろチャンスと前向きに捉え、自分の残りの仕事人生を豊かにできる仕事を選んだのである。

 Aさんはこう話す。「いろいろな人と出会うことは楽しい。気持ちの良い人もいれば、相性が悪く嫌な人もいる。結局のところ、経験して自分なりに仕事や交流の仕方を見つけることが大切だと思う」。もし読者が多様性に接するチャンスを目の前にしたら、迷わずに手を挙げることを勧めたい。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長
永井 昭弘(ながい あきひろ) 日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP社)がある。