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 働き方改革の一環として、テレワークが推奨されている。会社に来なくても在宅勤務やコワーキングスペースの利用、あるいはモバイルで駅や空港、ホテルなどでいつでもどこでも仕事ができるのは結構なことだ。IT業界にとってはテレワークの普及はビジネスチャンスでもあるので、多くのITベンダーが会社の施策として、自社のテレワークの普及に取り組んでいる。

 今後の普及には期待するが、「本当にそのテレワークは必要ですか」と疑問に思うこともしばしばある。特に交通の利便性の良い都心で、新しくて快適なビルにオフィスを持つITベンダーのSEや営業に、自宅勤務やコワーキングスペースは本当に有効だろうか。

 通勤時間が片道2時間ならば在宅勤務で往復4時間が削減されるが、片道1時間以内なら通勤も気分転換や軽い運動を兼ねると考えればそんなに悪いものではない。それに自宅が必ずしも快適な仕事環境とは限らない。「自宅だと諸事情で仕事にならない」という声も聞く。こう言うと筆者はテレワーク否定派かと思われるかもしれないが、それは全く逆で筆者自身はずっと以前からテレワーク派である。

 複数の会社や仕事を持ち、コンサルタントとして現場でも作業をして、出張も多いとなると、事務所には勤務時間の半分もいない。「社長元気で留守がいい」を実践しているので、テレワークは不可欠だ。だが、筆者以上に本当にテレワークを必要としている人、テレワークの普及によって仕事の内容や質が変化している人も数多くいる。筆者の経営者仲間のAさんもその一人だ。

 Aさんは高知県の四万十で食品製造と地域商社を経営している。四万十で店舗や工場を経営するだけでなく、首都圏や関西圏のデパートの催事販売にも積極的に出店している。またAさんは地域ビジネスの先駆者として、全国各地の地域商社や道の駅運営会社などからアドバイザーを依頼され全国を飛び回っている。

 四万十から高知空港まで2時間以上かかる。高知空港とつながっているのは東京や大阪など大都市ばかりで、それ以外の地域に行くときは大変だ。東京から出発するのとはわけが違う。Aさんは決してITに精通している方ではない。むしろ技術的なことはほとんど分かっていない。

 しかし、ツールとしてモバイルルーターやノートPC、スマホや各種変換ケーブルなどのハードウエアとパワーポイントなどの基本的なソフトウエアを携帯する。そしてSNSでの情報発信はそれらを「使い倒す」という表現がぴったりである。Aさんが地元の四万十にいる日数はどんどん減っているそうだ。

 それは各地から呼ばれる回数が増えたこともあるが、それ以上に地元にいなくても出張先からリモートで会社のマネジメントができるようになったことが大きいという。必要に迫られてテレワークを始め、それが発展して仕事のやり方が大きく変わり、さらに新しい仕事が増えているのがAさんの現状である。

 おそらくIT業界の「とりあえず」テレワークもどこかで転換期があり、本格的に活用されて仕事が大きく変わる時が来るだろう。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO
NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長
永井 昭弘(ながい あきひろ) イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP社)がある。