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 技術は何かを成し遂げるための手段であり、システム開発・運用の現場では「目的を達成するため、いかに手段(技術)をうまく使うか」というのが強い組織を作るための大きなテーマの1つになります。つまり強い組織には、個々のメンバーの能力が高い(技術的理解が深い)ことと、組織内で明確な目的が共有されていることの両方が必要です。

 要員などのリソースを含む技術力がなくても、目的が明確であれば、不足部分は外部などから調達することもできるでしょう。しかし、それが一時的なものならまだしも、永続的となった場合、制約(例えば休日夜間の対応など)が出てきてしまうことがあります。逆に、技術力が豊富でも目的が明確でないこともあり得ます。この場合は、外部の力で補うのは難しいかもしれません。

 技術と目的のバランスを保ちつつ、さらにスピード感や達成感(実績)を得るために、現場のマネジャーには、あるべき姿を示し、こまやかな対応をしながら組織を動かしていくことが求められます。

 そのときに課題となることの1つが、現場と経営層の認識のズレをいかに埋めていくかです。技術と目的を持って現場が新しいことに挑戦しようとしたときに、業務の執行に責任を持つ役員と意識が合わなければ、先に進めなくなってしまいます。

 筆者の現場では、未来に向けた施策を実践するため、日々活発に議論を重ねています。クラウドの新しい技術を採用する、従来なかったような新しいサービスを立ち上げるなど、そのテーマは様々です。こうした新しいチャレンジを経営層に提案し、進めていきます。

現場と経営で目的が異なる

 比較的規模の大きい案件では、(1)現状のインパクトと新しい施策、(2)物理的、論理的インパクト、(3)工数、スケジュール、(4)施策に対する見積もり、(5)従来の予算との差分─といった内容を詳細な資料にまとめて、提案します。

 しかしながら、このような案件を上申しても、反応が芳しくないことがあります。ほかの案も検討する必要が出てきて、それまでの工程を違う形でやり直すといった作業が続くと、メンバーのやる気は不安や不満に変わり始めてしまいます。

 こうなる原因は、現場と経営などの立場の違いから、双方の目的が異なることがあるからです。例えば、現場が技術的な優位性を訴えたとしても、経営層はその優位性に重きを置いていないこともあります。その場合経営層には、「そもそも現場の目的の意味がわからない」「このチャレンジは現場の自己満足ではないか」などと映ってしまいかねません。

 確かに現場は、技術の流行など、技術者視点の正義でやりたがる傾向にあります。会社という大きな組織の視点では、現場と相反することが起こり得ます。

 こうした問題には、時間をかけて丁寧に認識を合わせていくしかありません。お互いの立場が異なる前提に立ち、相手の視点に合わせた説明や議論が必要です。現場として達成したい目的やそのための手段が1つであっても、伝え方は視点によって変わるからです。

 丁寧な認識合わせでは、例えば相手がその現場を経験しているのか否かによって、同じ情報量でも理解度が異なります。相手のバックグラウンドを把握し、可能な限り共通語で議論を進めることも重要です。

 このような話は、営業と技術などの組織間でも多く見られるでしょう。これらをも乗り越えられるような強いコミュニケーションを取ることができれば、現場が働きやすくなることは間違いありません。

高岡 将(たかおか すすむ)
リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 技術フェロー
高岡 将(たかおか すすむ) 大手金融企業のシステムを10年ほど経験しベンチャー企業でソーシャルゲームなどの大規模トラフィックを経験。その後、ハードウエア、クラウドベンダーを経験し現職へ。オンプレミス、クラウド、仮想化などの理想と現実、未来を設計する。