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職場では、様々なトラブルが起こる。とりわけ、パワハラやセクハラといったコンプライアンスに関わる問題は我慢の時代ではなくなったこともあり、報告件数が顕著に増える傾向にある。コンプライアンス順守が叫ばれる今、企業は対策に乗り出さなければならない。これらのトラブルをどう解決すべきか。5つの事例から対処法を紹介する。

(杉本 一裕=特定社会保険労務士/行政書士)

 パワハラ(パワーハラスメント)やセクハラ(セクシャルハラスメント)という言葉は一般に使われるようになり、誰もが意識しなければならない時代になった。

 IT職場では、プロジェクトマネジャーやチームリーダー、チームメンバーというように様々な立場の人間がプロジェクトに参加する。円滑にプロジェクトを進めるには、チームの良好な人間関係が欠かせない。パワハラやセクハラにうまく対処できなければ、チームの生産性に支障をきたしてしまう。

 厚生労働省はパワハラを大きく6つの類型に分けて注意喚起している(表1)。

表1●職場のパワーハラスメントの6類型
表1●職場のパワーハラスメントの6類型
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 身体的な攻撃は暴力、精神的な攻撃は暴言や侮辱のことを指す。人間関係からの切り離しは無視、個の侵害は仕事に関係ないプライベートなことに深入りすることなどを指し、当然NG の行為だ。また、過大な要求は不可能な業務の強制、過小な要求は低レベルの業務の強制に当たる。

セクハラの言動には類似性あり

 セクハラにも注意したい。筆者はセクハラが事実であった場合の人事的処分を含めて、相談を受ける。今では男性もセクハラだと言える時代だが、会社を通じて筆者に相談があるのは圧倒的に女性だ。

 セクハラの言動にはパワハラと類似性がある。「契約を更新するから」「正社員にするから」「昇進や昇格させるから」という言葉をちらつかせ、性的関係を迫るのが代表例だ。または相手が嫌がる差別的発言を繰り返す例も目立つ。

 このようなIT職場のパワハラやセクハラに対して、リーダークラスの人は常に意識して取り組まなければならない。本稿では、5つの事例からパワハラやセクハラへの対処法を紹介する。

指導のつもりがパワハラに 余計なひと言に注意せよ

Q  部下のSEを指導中に「つらい。パワハラだ。労災で休みたい」と言われました。もちろん私は言葉に気を付けて話していましたし、周りの社員も叱られるほうに非があり乱暴な指導ではなかったと言っています。

A  熱心に指導することがパワハラになるのだろうか。パワハラに当たるかどうかを確かめるには、表1に示した厚生労働省が公表しているパワハラの6つの類型を参照する。パワハラは法的に明文化されているわけではないので、まずは自分の行動が6項目に該当しないかどうかを確認してほしい。

 難しいのはそれぞれの項目に該当するかどうかの基準になる。当然、殴る蹴るなどは、誰もがダメと理解している。また、一般に起こっているパワハラは、権力のある上司が部下に行うものだが、部下が上司を馬鹿にして威圧的な態度を取るのもパワハラとされる。これも多くの人が分かっていることだろう。

 ただし、パワハラはこのような分かりやすいものばかりではない。大きな問題に至らず、起こっていることに気付かない「隠れパワハラ」もある。

余計なひと言がパワハラを招く

 隠れパワハラの多くは「余計なひと言(暴言)」にある。仕事に関係のない余計なひと言を付け加えたために、「今のはパワハラだ」とトラブルになっているケースが多いように感じている。

 そこで、部下の指導では、仕事に関係のない言葉を添えないことが重要である。家族や恋人、本人の特徴など、プライバシーに関することを言うのがこれに当たる。例えば「こんな仕事もできないのによく彼女ができたな」「よく結婚ができたな」といった言葉だ。

 ほかにも、脅迫に似た排他的な言葉を添えるのは厳禁となる。例えば、「給料泥棒」「不要な社員」「異動させるぞ」「どこかに飛ばすぞ」といった本人を追い込むような言動がこれに該当する。

 仕事に関係のないことを強要しないことも重要だ。これには、社内の飲み会や球技大会などへの参加を強制することが該当する。休日や終業後は自由時間だ。このような時間に飲み会などを強制することはできない。自主参加が基本になる。

 また、メールなどを使って半ば強制するように参加を促すこともやめるべきだ。

 上司やリーダーが部下を指導するときは、冷静になること、そして仕事に関係ない“余計なひと言” を付けないように心掛ける。

 パワハラが一般的に意識されるようになり、ニュースにも取り上げられることが増えた。このような背景から「叱りにくくなった」という話をよく聞く。

 ただし、業務上の指導については、遠慮する必要はない。上司やリーダーであれば、部下が人に迷惑をかける行為をしてしまった際は、当然指導すべきと言える。

 例えば、ユーザーとの約束をすっぽかした、期限に間に合わないと分かっていたのに報告しなかった、トラブルになる可能性がある不具合について相談しなかった、などの行為だ。これらは、上司が指導して当然なのだ。