ビジネスの知識やスキルを学ぶために、最も手軽でオーソドックスな手法は関連するビジネス書を読むことでしょう。読みっ放しで何もアウトプットしないと、学んだ内容を身に付けることはできませんが、「どんなものなのか」「何が大事なのか」を知るためには、書籍を読んで理解することが近道です。
ビジネス書から学ぶ場合、注意すべきことがあります。それは、必ず複数冊の関連書籍を多読することです。名著と呼ばれる書籍やベストセラー書籍であっても、その1冊だけ読んで分かった気になるのは危険です。なぜならビジネスには絶対的な正解も解法もないからです。
関連書籍を多読することで3つの見解を得ることができます(図1)。
異なる著者の考えに触れる
1つめは共通見解と相違見解です。同じテーマについて、異なる著者の考えに触れると「大方の意見が一致すること=共通見解」と「意見が分かれること=相違見解」が分かります。共通見解はその分野の常識として考えればよく、相違見解は専門家の間でも意見が分かれる部分だと捉えることができます。
2つめは良質見解と悪質見解です。書籍には良書もあれば、残念ながらそうでないものもあります。たまたま手にとった1冊があまり良書ではないと自分の考えもそれに引きずられてしまいます。多読することで、見解の良しあしを判断できるようになります。
3つめは垂直見解と水平展開です。垂直見解は時系列でその領域がどう変化しているのかというもの、水平見解は現時点でどんな流派や考え方のパターンがあるのかを俯瞰するものです。知識の広がりを習得できるのも多読のメリットです。
このような見解を得るために多読を勧めるのですが「忙しく、本を読むのが遅いので、なかなかたくさんの本を読めない」という人も多いと思います。そこで、多読に向く読み方を紹介します。
全てを読まない「サーチ読み」
筆者がよく使うのが「サーチ読み」です。あらかじめその本を読む目的(何を知りたいか)を決めて読み始め、それが書かれている部分をサーチ(検索)するように本を読むことです(図2)。
まず目次を見て、どこを読むかを決めます。書籍全体で7章あるうち、自分の知りたいことが2章、4章、5章に書いてありそうだったなら、その部分だけを読むのです。
「折角購入したのだから、もったいないので最後まで読みたい」「大事な部分を読みそびれてしまうかもしれない」と思われるかもしれません。特に、これまで本を「熟読」されてきた方にとっては、サーチ読みは受け入れ難いことでしょう。
もちろん、小説など、読むこと自体を楽しむ際には「熟読」で構わないと思います。しかし、仕事のために読む本では、必ずしも熟読する必要はありません。初めて触れる領域の入門書であれば全部に目を通しても構わないと思いますが、その後は読破しなくてよいのです。
目的意識があれば、サーチ読みでも十分、自分が得たい知識や情報が目に入ってきます。仕事に必要ない興味のない箇所に時間をかけることはありません。サーチ読みができれば、2日に3冊くらいはビジネス書が読めるようになります。分厚い本でも2~3時間もあれば十分読了できます。「ビジネス書は、読むモノではなく、検索するもの」と割り切ってみてはどうでしょうか。