利用実態やリプレースの難しさを見てきたが、そもそもエンジニアは、COBOLに対してどんなイメージを持っているのか。ここからは、COBOLの短所についてアンケート結果を見ていく。いったいCOBOLの何が悪いのだろうか。
調査では「開発言語COBOLの短所として、どのようなイメージを持っていますか」と聞いて、上位3つを挙げてもらった。その結果、COBOLの短所として最も多く挙がったのは「COBOLエンジニアの確保が難しい」(665人)だった(図6)。およそ半数の回答者がCOBOLの短所として挙げている。
年代別に見ても、20代を除く全ての年代が人材確保の難しさを短所の第1位に挙げている。
COBOLの短所の第2位は「新規開発案件が少ない」(424人)だった。特にIT企業に在籍する回答者が短所として挙げている。第3位は「COBOLスキルの市場価値が低い」(404人)、第4位は「古い開発言語で将来性がない」(384人)と続いた。
アンケートの自由記入欄には、エンジニア確保の難しさを訴えるコメントが多く寄せられた。以下でいくつか紹介しよう。
「定年後の再雇用でシステム運用に従事しているが、これだけ大規模なシステムを今後継続して運用できるのかと不安に思う。オープン系への移行を試みたが、COBOLの言語の知識とオープン系の言語の知識、業務の知識を兼ね備えた技術者を確保するのは難しく、結果的に諦めざるを得なかった」(60代、システム運用/サポート)。
「定年によるCOBOLエンジニアの大量退職が数年のうちに見込まれている。だが、若い人にCOBOLエンジニアがいないので将来が不安だ。COBOLの統合開発環境の導入など開発環境の見直しを検討しているものの、それでCOBOLエンジニアが確保できるのかは不透明である」(40代、SE)。
シニアSEの扱いに頭を悩ます
人材確保を難しくしている最大の要因は、COBOLエンジニアの高齢化のようだ。裏返せば、COBOLに精通した高年齢のシニアSEの活用が現場では不可欠といえる。ところがコメントを見ると、そのシニアSEの扱いに頭を悩ませているという声が多かった。
「COBOL技術者を要請すると自分よりも年齢が上の人しか来ない。結構、気を使うので疲れる」(30代、社内SE)。
「COBOL案件はプロジェクトメンバーが高齢化しがちで、体力面などに問題を抱えやすい」(40代、プロジェクトマネジャー)。
「COBOL技術者の高齢化によって、生産性の悪化などの課題が生じている。そのため案件へのアサインが難しいと感じる」(50代、経営層)。
シニアSEの活用が困難となれば、クローズアップされるのが後継者問題だ。しかしアンケート結果を見ると、COBOL案件で若手を活用するのは相当に難しいことが分かる。
年齢別にCOBOLの短所を見ると、実に20代の回答者61人の72.1%が「古い開発言語で将来性がない」と答えている。他の年代とは異なる傾向であり、断トツだ。このことから、20代のエンジニアが今後COBOLのスキルを身に付けることは期待できそうにない。
若手のエンジニアからは、以下のようなコメントが寄せられた。
「COBOLは社会からの評価が低く、若手エンジニアから敬遠されがち。ネガティブなイメージしかない」(20代、プログラマー)。
「他の言語を習得したほうが将来性や市場価値が生まれると思う。古い金融システムはCOBOLが多く使用されているので保守案件はある。しかし、特定企業や業種が占めているのではないか」(20代、SE)。
「会社としては古い技術と見なされてしまい、いくらCOBOLの現場で頑張っても評価されない」(30代、プロジェクトマネジャー)。