サーバーの払い出しは手続きが多く、時間がかかっていた。構成管理ツールやコンテナを活用すれば大幅に時間を短縮できる。新しい技術やツールを使って素早く開発に着手しよう。
システム開発のリードタイムが短くなる中、インフラの調達にも速度が求められるようになっている。九州電力とぐるなびの事例から調達における無駄取り法を学ぼう。
ツールでサーバー払い出しを短縮
「電力自由化が進み、新たなサービスを短期間で構築することが求められている」。こう話すのは九州電力の成松伸之テクニカルソリューション統括本部情報通信本部システム運用グループ長だ。九州電力では米ヴイエムウェア(VMware)の製品でサーバーを仮想化し、利用している。2019年6月末時点で約60台の物理サーバー上に965台の仮想サーバーが稼働している。2018年には米レッドハット(RedHat)の構成管理ツール「Ansible Tower」を導入した。
導入のきっかけは、2020年4月に迫った電力会社の法的分離(分社化)である。競争が発生し、「これまで以上に素早いシステム開発が求められている」(成松グループ長)と説明する。調達に時間がかかっては、素早いシステム開発など不可能。九州電力は、VMwareを活用したプライベートクラウドにAnsibleを導入し、サーバーの払い出し時間を短縮した(図1)。
サーバーが必要な部門は、決められた文書に必要なCPUコア数やメモリー容量、OSの種類などを記述し、九州電力のプライベートクラウドを管理・運用する九電ビジネスソリューションズの担当者に送付する。Ansible上には設定ファイル集が用意されているので、Web画面のボタンをクリックするだけでサーバーの払い出しは完了する。要する時間はわずか5分程度だ。成松グループ長は「サーバーごとにミドルウエアの構成など設計しなければならないので工数ゼロにはならないが、サーバー構築の作業費用が4分の1になった」と成果を強調する。
ただし、Ansibleの導入が全てスムーズにいったわけではない。導入直後は設定に戸惑うこともあった。成松グループ長は、いきなりサーバーを払い出すのではなく、通信機器の設定などに試験的に利用し、設定のコツや有用性を確認した。「新ツールの導入はスモールスタートを心がける」と導入のポイントを話す。
現在、多くの企業がパブリッククラウドを活用しているが、九州電力はあえてパブリッククラウドを使わない選択をした。その理由を成松グループ長は「自分たちで管理できない状態になるのを避けたかったから」と説明する。
パブリッククラウドはネットワーク障害などが発生した際、原因を突き止めるのが困難だ。「トラブル発生中は待つことしかできず、復旧見込みも分からない」(成松グループ長)。プライベートクラウドは自社で全て管理できるので、トラブル発生時の原因も突き止めやすいという。