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プロジェクトと直接関係のない事務作業を先延ばしにして、後から締め切りに慌ててしまう。プロジェクトの関係者が善意で招集した打ち合わせが、必要のない時間潰しになることがある。こうした雑事は先送りせず片付けておくか、無駄な仕事にならないようにすることが大事だ。

 プロジェクトを推進しようとしているあなたを襲う邪魔モノ、プロジェクトの進行を阻む阻害要因とどのように向き合っていけばよいでしょうか。今回は、「雑事・半端仕事」を取り上げます。

 仕事をしていると様々な雑事が発生し、そのときにやるはずだった仕事の時間を奪います。雑事に対処する基本的な考え方は、やってしまうか、雑事でなくなるように形を変えるか、の2つです。まずは、どんなことが起こるか見てみましょう。

ミッション1 督促の嵐を切り抜けよ
「16時までに欲しいんですけど」

 プロジェクトマネジャー(PM)の小野田吐夢は、デスクの下からバッグを取り出して肩にかけた。やっと進捗報告書が完成して、これから客先での進捗会議だ。進捗に少し遅れが出ていて、霞ケ関インターナショナルの岸本課長はだいぶ神経を尖らせている。少し早目に会社を出て、客先近くのカフェでリカバリー策の説明の仕方などをじっくり考えるつもりだったのだが。

「小野田さーん、電話。総務部からです。何か急ぎだそうですよ」

 鹿野SEがそう言って電話を転送してきた。小野田はため息をつきながら受話器を取った。

「はい、小野田です」

 甲高い早口の声が、小野田の耳に響いた。

「総務の村上ですけど、小野田さん。職場改善アンケートの回答、昨日が締め切りだったんですよね」

 小野田は、自分の額をたたいた。そうだ。一度、忙しいからと締め切りを延ばしてもらっていたのだ。

「すみません。外出から戻ったらすぐやりますから」

 本当は、今日の進捗会議を切り抜けたら、客先に常駐している部下の花山を誘って、軽く一杯やりに行こうと思っていたのだが…。

「こちらで集計して、今月の労組との協議会に出さないといけないんで、16時までに欲しいんですけど」

「えーと、それまでに戻るのは難しいです」

「既に締め切りはギリギリまで延ばしてるんですよ。こちらのスケジュールも厳しいんです」

 そりゃそうだろうけど、今はもう出ないといけないのだ。小野田は苦し紛れに言った。

「じゃあ、外出先の会議が終わってから出先でやります。が、たぶん16時半までには何とか送れると思います」

 受話器を置きながら、内心無理かもな、と思う。進捗会議は長引く可能性が高いし、客先でPCを使うわけにはいかない。

 改めてバッグを担ぎ直して出かけようとしたとき、折悪しく笑顔の倉木課長がやってきた。

「小野田君、部長会に出す収支報告書はどう?」

「あ、はい。材料はほぼそろってるんで、大丈夫です」

 横をすり抜けようとする小野田を遮るように、倉木課長は両手を広げた。

「よかった。だったら、ちょっと追記してもらいたいことが出てきたんだよね。昨日メールした、来期見通しの3つめの新規案件の…」

 倉木課長の言葉に、小野田はやむなく口を挟んだ。

「申し訳ありません。今からちょっと外出なんで」

 うなずきながらも倉木課長は話をやめようとしない。

「メールした通り、見積額がまだ変動するはずだから、不動産営業部に聞いて、見通しを確認してほしいんだ。で、その旨を収支報告書の備考欄に追記しておいて」

 小野田は、上司のブロックをかわして歩を進めた。

「わかりました。明日確認しておきます」

「うん。書きぶりが微妙になると思うから頼むよ」

 ようやく廊下に出て、エレベーターホールに急ぐ小野田の背中に、声がかかった。

「見いつけた。小野田君、今日は逃がさないわよ」