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サービス案を絞り込み、選定する

 サービス案が固まったら具体化していきます。サービスの内容を細かく定義したり、実際のユーザーの利用フローを思い描きながらシステムの機能や必要なデータ、発生する業務などを整理したりします。

 具体化したサービス案の中でどれを採用するのかをここで決定します。サービス案を絞り込んでおかないと、それぞれのサービス案に対してシステム要求・業務要求の整理作業が発生し、工数がかなりかかってしまうからです。

 絞り込む際の評価基準としては「効果(課題の解決度合い)」「コスト(初期コスト、運営コスト)「実現難易度」などがあります。この評価基準に基づき、先ほどの事例の各サービス案を評価してみましょう(図6)。

図6●2つのサービス案の評価
図6●2つのサービス案の評価
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 ユーザーの忙しさを考慮すると、2つのサービス案のうち①の方が効果がありそうです。しかしユーザーの手間をなくすためにパンを選べないので、ユーザーから不満が出る可能性があります。②はパンを選択できる自由度があるものの、注文する手間を不満に感じる可能性があります。

 コストは、業務が複雑になる②の方が高いでしょう。一方、実現難易度は①のほうが大変そうです。冷凍パンを定期的に届ける仕組み自体がないため、その仕組みの構築に手間がかかりますし、ユーザーから受け入れらない可能性もあります。

 これらの結果を見ると、JQベーカリー社の場合は①と②のいずれも甲乙つけがたいということになりそうです。

 サービス案を考えている時点では確実な予測はできません。ユーザーの課題解決効果が高いと思ってコストをかけたところで、実際その効果は得られないかもしれません。

 つまり、経営判断として①②のどちらかに賭けることになります。このためDXプロジェクトには経営層が積極的に関わる必要があります。

 JQベーカリー社は、難易度は高いものの、最も課題を解決できそうな①のサービス案を選択しました。次回は、①のサービス案をテーマにサービス要求定義の方法を見ていきます。

下田 幸祐(しもだ こうすけ)
JQ 代表取締役社長
2001年、早稲田大学政治経済学部卒業。アクセンチュアに入社し、官公庁本部で大規模開発プロジェクトにおける開発やプロジェクト推進、情報化戦略計画策定など幅広い業務に携わる。2007年、マネジャー昇進後に退社し起業。自社Webサービスの企画・開発・運営を行いつつ、大手企業の新規事業の戦略立案、アプリやシステム開発プロジェクトのプロジェクトマネジャーを歴任。得意領域はAI・IoTを活用したサービス開発などのDX案件や、新事業・サービス案件、デジタルマーケティング基盤構築案件など。