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「事業戦略・計画作成」の作業

 商品やサービスのシステム機能、運営業務の内容などを明らかにしました。これを受けて、どうユーザーを獲得していくのか、どの程度の収益が見込めるのかを整理するのが「事業戦略・計画作成」作業です。

 事業戦略・計画作成作業の目的は、サービスの収益性を検証することです。サービスが絵に描いた餅にならないように、競合や代替サービスと比較して何が優れているのか、中長期的にどう競争優位性を保っていくのかなどの戦略や、収益計画を検討していきます。

 もちろん、やってみないと分からないことがあるのは間違いありません。しかしよくよく調べたら、同じようなサービスが既に出回っている、代替手段があってこのままサービスを開始しても誰も使ってくれない、といった状況が起こるのは避けたいものです。ユーザーを獲得できたとしても、明らかに赤字になるサービスにはしたくありません。

 この作業で収益性を見込めない場合、サービス内容自体も見直す可能性があります。必要であれば見直しをしつつ、ある程度の収益を見込める計画を立てることが、この作業のゴールになります。

「3C」「4P」の基本を押さえる

 事業戦略・計画作成の流れを整理しましょう(図8)。サービスの優位性の検討や競合比較等からの価格検討、販売方法などを検討し、それを受けてコスト計算をします。そして収益モデルの作成(利益の計算)を行います。最後に、事業展開のストーリーを整理して、売上計画・コスト計画を立てます。

図8●事業戦略・計画作成の流れ
図8●事業戦略・計画作成の流れ
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 新たなサービスや商品を生み出すDXプロジェクトでは、「3C」や「4P」などのマーケティングのフレームワークを用いて販売戦略を整理しておくとよいでしょう。ほかにも様々なフレームワークがあるので、使いやすいものを選びましょう。

 3Cは「顧客像(Customer)」「自社(Company)」「競合(Competitor)」の関係を分析するものです。顧客像であれば「朝、自宅でおいしいパンを食べたいが、パン屋に行く時間がない」。自社ならば「全国で最も店舗数が多く、カバー範囲が広い」といったように規定します。

 競合がいる場合は、競合の提供する商品内容や機能などを具体的に洗い出し、想定する顧客にとって自社サービスのどこが強み(アピールポイント)なのかを整理する必要があります。既存の製品やサービスがあるのに、同じようなものを作っても、または同じような売り方をしても、ユーザーは選択してくれません。

 なお、競合と代替とは分けて考えます。競合とは同様のニーズを同様の方法で満たすもの、代替とは同様のニーズを他の方法で満たすものです。「朝、自宅でおいしいパンを食べる」というニーズに対する競合は生協の冷凍パン。これに対して「朝、おいしいパンを食べる」というニーズを自宅以外でかなえるものとして、カフェスペース付きパン屋の朝食セットは代替手段です。

 4Pは、事業計画を立てる上で有用なフレームワークです。「商品(Product) 」「価格(Price)」「販売チャネル(Place)」「プロモーション(Promotion)」を整理します。

 このうち、特に価格は重要な要素です。コスト(商品の原価)や提供価値、競合・代替製品などから、顧客が納得するであろう価格を決める必要があります。JQベーカリー社の事例では、競合の生協の冷凍パンでは1つ200~300円、カフェスペース付のパン屋の場合セットで400円程度でしょう。このあたりの価格感が1つの目安です。

 販売チャネルとプロモーション手段は、この後の利益率の計算や売り上げ・コスト計画で必要な情報になります。例えば、販売チャネルとしてネットだけでなく店頭販売を行う場合、店頭における運営コストを考慮しなくてはなりません。プロモーション手段としてSNS広告も実施するなら、その広告費用をコストとして見込む必要があります。