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Question

 退職の報告を会社にすると、秘密保持と競業避止の誓約書の提出を求められました。秘密保持はまだしも、同業他社への転職を禁止する競業避止には納得できません。私はSEなので、今と同じIT業界への転職を希望しているからです。それでもサインしなければ退職できないのでしょうか。

Answer

 円満に退職したいのなら、会社のルールに従ってサインしたほうがよいでしょう。しかし、納得できないならサインしなくても問題ありません。なぜなら、会社は退職を拒否できないからです。

 会社が誓約書の提出を求めるのは、秘密保持や競業避止のためです。昔からある慣習的な運用であり、「念のため」という意味で書かせる会社も多いようです。就業中に知り得た重要な秘密を漏らしたり、重要でなくても会社への誹謗・中傷をSNSなどで拡散したりするのを防ぐ狙いがあります。

誓約書を出さないと退職できない?

 特に技術職や研究職の場合、製品開発などの重要な秘密情報を知り得る機会が多いので、誓約書を求める企業が確かにあります。これに対して競業避止は、同業種の企業や、競合他社への転職を禁止するものです。

 しかし憲法によって職業選択の自由や営業の自由が認められています。会社が誓約書を書かせたところで、一般に退職後まで及ぶ効力はありません。実際、転職は自分が持っているスキルやノウハウを武器にして行うものです。IT業界の場合、同じ業種、競合他社への転職がもちろんあるでしょう。それを禁止する会社は世間的に見て現実的ではありません。

 このように誓約書による運用は、あまり効力がないという現実があります。また、誓約書を提出するかしないかに関係なく、会社は退職を拒否できません。質問者も後々のトラブルにならないように、理不尽で納得できない部分を修正してもらう、あるいはサインそのものを断ることを検討してみてはいかがでしょう。

 一方、会社が退職時に誓約書の提出を求めること自体に問題はありません。ただし、常識的な範囲にとどめるべきです。繰り返しますが「競合他社に就職してはならない」と書いた誓約書に無理にサインさせても意味がありません。会社にそんな権利はないと周囲から批判されるだけです。転職先が決まっていない場合は、将来の就職先など本人も分からないでしょう。それなのに転職先を制限する会社の行為に、不満や不信感を募らせるのは当然と言えます。

 誓約書を「書け」「書かない」というトラブルは実際によく起こっています。会社への不平不満が理由での退職なら、遠慮せずに断ってよいかもしれません。しかし人間関係に特に問題がなければ、円満退職したいと思うのが普通でしょう。

 会社としてどうしても誓約書が欲しいなら、退職時でなく入社時に求めるのがよいでしょう。入社時に拒否する社員はいないからです。それでも、会社は効力が限られていることを理解する必要があります。

杉本 一裕(すぎもと かずひろ)
人事コンサルタント
杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 大阪府立大学大学院/経営学修士(MBA)修了。IT企業在職中は人事領域のコンサルティングを多数実施する。その後、社労士と行政書士事務所を開業。IT・医療・学校・製造業や流通業など幅広い業種の顧問先業務に従事する。