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Question

 SEです。当社は裁量労働制を導入しており、残業手当の代わりに裁量労働手当が支給されています。しかし、毎日残業があり、明らかに手当が少ないと感じています。上司に不満をぶつけても、会社の決まりなので仕方がないとのこと。こんな状態は許されるのでしょうか。

Answer

 自分の努力ではどうしようもなく裁量の限度を超えている場合、裁量労働制を外してほしいと求めることができます。逆に言えば、会社は普段から長時間残業が続く社員をチェックし、裁量の無い場合は裁量労働の枠から外すべきです。

 裁量労働制は最近、ブラック企業の代名詞のようになっています。そもそも裁量労働制では、社員の裁量で仕事ができる職種や立場が決まっています。「裁量」という名が示すように、自分の裁量で仕事ができる職種や立場でなければ、裁量労働を適用できません。

 ところが実際には、裁量労働制によって残業代を抑制できると考えて、残業が多い企業が導入する傾向があります。そんな甘い考えは通用しません。導入に当たっては、労使協定の作成義務や職種制限があります。裁量労働が認められる職種とは、情報システムの設計や研究開発業務、デザイン業務などです。

 IT企業で注意が必要なのは、たとえSE職であってもプログラミングを担当するSEや若手社員には裁量労働制を適用できない点です。これらは裁量がある職種や立場ではないという判断です。

一般社員への適用はグレーゾーン

 一般社員に裁量労働制を適用している場合はグレーゾーンです。適用者の範囲は、現実にはクラス分けしたポジションなどで決めます。係長や主任クラスが対象になるでしょう。裁量の無い一般社員を裁量労働制の対象とするのは本来の趣旨からするとおかしいと言わざるを得ません。

 よって、質問者もまずは裁量労働を適用できる業務内容や立場かどうかを確認してください。現状分析や要件定義、設計などを担当しているのか、単にドキュメントの作成やプログラミングなのかによって状況が変わります。もし後者であれば、裁量労働制の枠から外してもらうよう、会社に申し出るべきです。

 裁量労働制で重要なのは、労使が何時間のみなし労働で合意するかという点でしょう。例えば、1日8時間労働の会社で「8時間労働したものとみなす」という条件で合意すると、残業代が全く支払われなくなります。「9時間労働したものとみなす」という条件なら、1時間×出勤日数分が裁量労働手当(定額残業手当)として支払われます。

 労使協定では、1日に何時間勤務したものとするかを定めます。ここで毎日2時間程度の残業をするSEばかりなのに「8時間みなし労働」とすれば不満が噴出します。逆に6時間しか働かなくても8時間働いたことになりますが、そんな社員有利になる会社はまずないでしょう。よって、労使協定では現実的かつ適切な時間を設定することが大切です。

杉本 一裕(すぎもと かずひろ)
人事コンサルタント
杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 大阪府立大学大学院/経営学修士(MBA)修了。IT企業在職中は人事領域のコンサルティングを多数実施する。その後、社労士と行政書士事務所を開業。IT・医療・学校・製造業や流通業など幅広い業種の顧問先業務に従事する。