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現場主体の課題解決力である「現場力」を提唱した遠藤功氏に、DXに取り組む開発チームの現場力とは何かを聞いた。チームありきの従来型システム開発と異なり、DXの現場では個の力が重要になると説く。

(聞き手は本誌編集長、森重 和春)

遠藤 功(えんどう・いさお) 氏 ローランド・ベルガー 会長
遠藤 功(えんどう・いさお) 氏 ローランド・ベルガー 会長
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、米系戦略コンサルティング会社を経て、2000年に欧州系の戦略コンサルティング会社ローランド・ベルガーに参画。現在は日本法人の会長を務める。戦略策定のみならず実行支援を伴ったコンサルティングで評価を得ている。(撮影:菊池 くらげ)
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そもそも遠藤さんが提唱された「現場力」とは何でしょうか。

 現場が主体的に動き、考えることで価値を生み出していく能力を「現場力」と言っています。指示されて動くのではなく、現場で働いている人たちが自分たちで考えて工夫し、仕事の成果の価値を高めていく、もしくは課題を解決していく。こうした現場力は日本の企業にマッチしたものです。日本のビジネスパーソンは真面目だし、能力は均質です。現場のポテンシャルは他の国に比べて高い。

 そういうナレッジワーカーが現場で生み出す知恵によって、品質が改善する、コストが下がる、サービスが良くなる。現場発の価値によって競争力が高まる。これは製造業だけでなく、小売業もサービス業もシステム開発の現場も同じです。

そんな日本企業の現場力の現状をどう見ていますか。

 この数年ほどで、さびついてしまった現場とさびつかせないように工夫してやってきた現場の差が出てきています。業種を問わず、さびついている現場のほうが多い。製造業で品質の問題などが取り沙汰されているのはその表れでしょう。

 現場をさびつかせる要因はいくつもあります。大きな要因の1つはコストダウンのために非正規社員を増やしたり、外注化を進めたりしてきたことです。また経営者が現場に行かなくなって現場との距離ができています。内部統制やガバナンスなどの管理強化もあります。さらに世代交代によって団塊の世代がいなくなり、技術継承ができなくなったことも影響しています。

 これらの要因によって現場力が毀損されてきました。これは経営者の問題です。さびついた現場からさびを取るのは簡単ではありません。

情報基盤構築とデジタル化は違う

ITの現場では今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が求められています。必要な現場力の定義は変わりますか。

 現場力の定義は変わりません。求められるものが変わっても現場力があれば自分たちで動いて対応し、課題解決していきます。

 ただし、現場力の中身は従来とは大きく異なります。これまで企業の業務システムのような情報基盤を手掛けてきた人たちがデジタル化を実践できるかといえば、それは難しい。情報基盤の構築とデジタル化は全く違う話です。今の問題は、両者をちゃんと切り分けて対応している会社が極めて少ないことです。

 まず、経営層の役割から大きく違います。CIO(最高情報責任者)がCDO(最高デジタル責任者)を兼務していてできるようなものではありません。発想が全く違うし、求められる能力も違う。現場の人材要件も組織の管理の仕方も異なる。これをまず明確に分けないと無理でしょう。

 情報基盤における業務系の大規模システム開発は、量は減ってもなくなるわけではありません。そこでは従来通りの現場力が必要です。例えば損保ジャパン日本興亜の大規模開発は、システム開発の現場力が発揮されてうまく回っています。これは日本IBM出身の大規模システム開発の専門家がCIOを務めているからです。