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 情報法制研究所(JILIS)は2018年10月11日、政府の知的財産戦略本部が検討を進める海賊版サイト対策への意見書を公開、ブロッキング法制化の検討をいったん白紙に戻すよう主張した。

 合わせてJILISは、リンク総合法律事務所の山口貴士弁護士が10日に知財本部に提出した意見書も公開した。同氏は米国での民事訴訟を通じ、海賊版サイト「漫画村」のコンテンツ配信を中継していた米CDN(コンテンツ配信ネットワーク)大手のクラウドフレアから漫画村の関係者とみられる契約者の情報を入手することに成功している。

 山口弁護士の意見書によると、同氏は2018年6月12日、氏名不詳の海賊版サイト運営者を被告、漫画家を原告とする民事訴訟を提起。15日に米裁判所はサイトの配信を中継していたクラウドフレアに対し、課金関係資料の提出を求める罰則付召喚令状(Subpoena、サピーナ)を送付した。

 29日にはクラウドフレアから資料が届き、サーバー契約者の氏名(ローマ字)、住所、メールアドレス、携帯電話番号、IPアドレス、サーバーレンタル代などが判明した。住所のマンション名に部屋番号がなかったため、課金に使われた米ペイパル子会社にもサピ―ナを送付したが、クラウドフレア以上の情報は得られなかったという。8月28日、山口氏は民事訴訟を取り下げた。

 その後、山口弁護士は弁護士会への照会、職務上請求などの手法で、クラウドフレアとの契約者を特定したという。一連の手続きについて山口弁護士と米国の法律事務所が得た報酬は「億単位ではなく、ゼロが幾つか少ない金額」であり、「海賊版サイトの被害者で頭割りをすればさしたる負担となる金額ではない」とした。

 山口弁護士は一連の経緯から、意見書で「合理的な費用負担の範囲で侵害者を探知する方法がある以上、立法を経ないブロッキングを正当化する緊急避難の補充性の要件は満たされず、ブロッキングを立法する根拠となる立法事実は存在しないものと考える」と主張した。

 JILISの意見書もこの山口弁護士の成果を引用したうえで、同氏が採った手続きはいずれも一般的に行い得る手段であり、「被害に気付いた時点で実施していれば、出版社は多大な被害を負う前に対処が可能であったと考えられる」とした。

 このほか約3000億円という被害額推計への疑義などを含めて「タスクフォースがこれまで前提としてきた事実に重大な誤認があった」とし、「タスクフォースの議論のうち、少なくともブロッキングに関するものについては、前提となる事実を見直した上で、再検討が必要である」と主張した。

 知財本部が主催する「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」は、2018年10月15日に第9回が開催される。

■変更履歴
当初記事で、民事訴訟の被告を「クラウドフレア」としていたのは「氏名不詳の海賊版サイト運営者」の誤りです。お詫びして訂正します。 [2018/10/15 10:30]