NTTコミュニケーションズ(本社東京、以下NTT Com)は、仮想的に化学プラントの挙動を再現する仕組み「プラント向けデジタルツイン」上で有効な制御パラメーター値の自動探索に成功したと発表した(ニュースリリース)。化学プラントでの手動制御の自動化と、それによるコスト低減や生産の安定化の実現が期待できる。横河電機や横河ソリューションサービス(本社東京都武蔵野市)と連携して開発した。

 プラント向けデジタルツインは、同社の「蒸留塔状態予測モデル」と横河電機の「プラント制御シミュレータ」を組み合わせて構成。蒸留塔状態予測モデルは、深層学習(ディープラーニング)を用いた時系列データのモデル化技術を活用し、蓄積されたプロセスデータから反応器の状態変化を予測するもの。プラント制御シミュレータは、制御対象に対して、測定値と設定値の偏差・積分・微分によって操作量の大きさを導き出す「PID制御」をシミュレートする。

 3社は、2018年12月から共同実証実験を実施(図)。NTT Comの持つ可視化技術「時系列アトリビューション解析技術」で蒸留塔状態予測モデルを可視化し、専門家の知見と照らし合わせながら化学プラントの挙動を正しく再現できているか確認しながら、プラント向けデジタルツインを構築した。時系列アトリビューション解析技術とは、深層学習を適用した予測モデルにおいて、時間変化する各入力の影響を可視化する技術。今回の実験では「どの程度の遅れ時間をもって」「正負のどちらの方向に影響を与えるのか」を可視化し、専門家の知見と照合した。

図:実証実験のイメージ
図:実証実験のイメージ
(出所:NTTコミュニケーションズ)
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 3社はデジタルツイン上で、状態予測値に加えて化学プラントの挙動そのものをシミュレートし、最適な制御パラメーター値を約2500種類のパターンの中から自動で探索した。その制御パラメーター値と横河ソリューションサービスのプラントコンサルタントが導き出した結果を比較したところ、2つのパラメーター値が一致。すなわち、深層学習を用いた制御パラメーターの自動探索手法を実際のプラントの制御改善に生かせることを確認したとする。

 プロセス系プラントでは従来、時間によって複雑に変化する入出力関係を数値化・可視化するのが難しく、専門的な知識を持つコンサルタントが調査・検討を重ねて各工程の改善を進めてきた。この作業の効率化・自動化を目指して、3社はAI(人工知能)を活用したシステムを構築。これまでに2回の実証実験を実施している。

 まず2017年10月、IoT(Internet of Things)/AI技術を活用して高度エネルギーマネジメントシステム(EMS)を構築し、工場全体の最適化を目指す実験を開始した(2017年10月5日付ニュースリリース)。2018年4~10月には、仮想的にプラントを再現するために必要なシミュレーターを構築し、予測誤差の累積によるかい離を起こすことなく、連続的にシミュレーションを実行することに成功している(2018年10月4日付ニュースリリース)。

 さらに今回、3社はデジタルツインを構築し、制御パラメーター値を自動で探索する共同実証実験に取り組んだ。3社は、この実験で得られた成果を高度化させ、プロセス系プラントにおける省エネや生産の安定化に向けた技術を開発していくという。

 NTT Comは「第3回 AI・人工知能 EXPO」(2019年4月3~5日、東京ビッグサイト)でこの取り組みを紹介する予定だ。