宇宙航空研究開発機構(JAXA)と官民ファンドのINCJ(本社東京)が連携協定を締結した(ニュースリリース)。オープンイノベーションの促進を通じた宇宙産業と関連産業の発展を目的とする。それぞれが持つ知見やノウハウ、ネットワークを結びつけ、宇宙分野から派生した新産業の創出を目指す。

 JAXAは、宇宙航空分野の研究開発に取り組む他、民間事業者などと共同で新たな発想の宇宙関連事業を創出するプログラム「宇宙イノベーションパートナーシップ」(JAXA Space Innovation through Partnership and Co-creation:J-SPARC)を展開している。INCJとの連携を通じてJAXAは、異分野における人材と技術、資金などを融合するオープンイノベーションに関して取り組みを推進。INCJが持つ投資や事業化などの視点を取り入れて、宇宙分野に限定しない技術革新・獲得を図る。

 INCJはロボットや人工知能(AI)、IoT(Internet of Things)、ビッグデータなどに加えて、宇宙産業ビジネスを重点投資領域の1つに据えている。これまでも投資活動を通してイノベーションや新産業の創出、データ利活用・社会実装の促進などに取り組んできた。

 加えてINCJは、民間企業からの十分な出資が見込めない宇宙産業に資金を供給する役割も持つ。これまで同産業に総額300億円以上の投資を決定。例えば、月面での資源開発に取り組むispace(本社東京)、宇宙ゴミの除去サービスを開発するアストロスケール(同)、超小型衛星による地球観測事業を展開するQPS研究所(本社福岡市)やアクセルスペース(本社東京)などに投資している。このうちアクセルスペースは、JAXAの小型実証衛星1号機を受注するなど、JAXAとの協力体制が生まれつつある。

 今回の連携では、INCJが持つ投資機能や市場動向の知見を生かすとともに、上記の投資案件との協力も強化。JAXAが宇宙機器・利用産業と協調して進める研究開発や成果展開、事業化を加速し、日本における宇宙産業基盤の強化や国際競争力の向上にもつなげる。