ソフトバンクは2019年5月10日、「Yahoo! BB ADSL」などのADSLサービスを2024年3月末で終了すると発表した。同社は理由を「保守部材の枯渇や設備の老朽化でサービスの安定的な提供が困難になることが見込まれるため」とする。2020年3月以降、設備の状況に合わせて一部の地域から順次、提供を終了する。代替サービスへの変更方法などは2019年10月から案内するとしている。
同社がADSLサービスを始めたのは18年前の2001年に遡る。事業参入に当たってはNTTの設備開放を巡って総務省と対立。当時の孫正義社長が霞が関に乗り込み、設備開放を認めなければ「ここでガソリンをかぶって焼け死ぬ」と言い放ったエピソードが有名だ。悲願の参入がかなうと、「パラソル部隊」を組成してADSLモデムを無償配布する販促を展開。街角を通行する人に片っ端から声をかけ、驚異的な勢いで加入者を伸ばした。
同社のADSLサービスの契約数はピーク時に500万件を超えていたが、2019年3月末時点の契約数は83万3000件。最近では光回線をはじめ、3Gや4G、BWA(広帯域無線アクセスシステム)を活用した無線ブロードバンドが浸透しており、ADSLは一定の役割を終えた格好だ。NTT東西も2023年1月末で「フレッツ・ADSL」を終了すると発表済みである。
強引な勧誘は目立ったが、ソフトバンクのADSLサービスが日本のブロードバンドを一気に広げる要因となったのは間違いない。今回、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長によるコメントは特に出ていない。