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 日本航空(JAL)は2019年7月17日、整備士の訓練用として開発した仮想現実(VR)システムを報道関係者向けに公開した。2020年春にかけて整備士の国家資格取得に向けた訓練課程に組み込んで実証実験を実施し、学習効果などを検証したうえで本格導入を目指す。

整備士向けVRのデモの様子
整備士向けVRのデモの様子
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 VRシステムは高性能のグラフィックスチップを搭載したゲーミングパソコンとVRゴーグル、東芝システムテクノロジーが開発した訓練教材のソフトウエアから成る。VR空間にJALグループが運航する小型機「エンブラエル170」「同190」の操縦席(コックピット)を再現。実証実験用のソフトウエアは、整備作業の一環としてエンジンを始動させる際に必要となる約200の操作手順を組み込んだもの。開発費用は数百万円程度としている。

 JALグループの整備子会社であるJALエンジニアリングには約3000人の整備士がおり、このうち整備後の確認作業ができる国家資格の「一等航空整備士」は約2000人、今回の実証実験で対象とするエンブラエル機の一等航空整備士は約200人いる。エンブラエル機は伊丹空港を拠点としている一方、一等航空整備士への昇格を目指す整備士の多くは羽田空港や成田空港に勤務するため、実機での整備を体験する機会が少ないという課題があった。また、今後エンブラエル機の増備や地方空港配属の整備士のローテーションなどのため、より多くのエンブラエル機の一等航空整備士を確保する必要があるという。

 一等航空整備士への昇格課程は、(1)座学(2)板で造った操縦席模型によるイメージトレーニング(3)実機や実機を高精度に模擬できるシミュレーターでの訓練――の順に進む。このうち(2)についてVRを試験導入。エンジン始動関連の200手順について、従来のイメージトレーニングとVRによる学習とで定着度の差を測定し、一定の学習効果が見込めれば、エンジン始動以外の手順も含めてソフトウエアを開発し本格導入を目指す。

一等航空整備士への昇格課程
一等航空整備士への昇格課程
(出所:JAL)
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これまでイメージトレーニングで使っていた板製の模型(右上)と今回のVRシステム(左下)
これまでイメージトレーニングで使っていた板製の模型(右上)と今回のVRシステム(左下)
(出所:JAL)
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 JALのデジタルイノベーション推進部が実施したヒアリングにより、こうしたJALエンジニアリングのニーズが分かり、2019年初頭から整備士の習熟度を高めるためのVRシステム導入に向けた検討を開始。「デジタルイノベーション推進部のパートナー企業のなかから、操縦席の膨大なボタン、スイッチやディスプレーなどを高精細に表示可能なVRシステムのベンダーを探した。プラント内を模擬した高精細なVRシステムなどの開発経験がある東芝システムテクノロジーを選定した」(JALの清水俊弥デジタルイノベーション推進部イノベーション推進グループ長)としている。

今回の実証実験の狙い
今回の実証実験の狙い
(出所:JAL)
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