NECは2019年8月5日、同社が開発した「空飛ぶクルマ」の試作機を公開した。機体は大型の無人航空機(ドローン)のような外観で、4つのローターで飛ぶ。同社の我孫子事業場に設置した専用の実験場で浮上デモを実施。自律飛行の第一歩となる、機体の姿勢制御技術を確立したという。無人の物流手段として2023年の実用化を目指す。

 浮上デモでは、安全柵のある縦20×横20×高さ10mの実験場で垂直離着陸を2回繰り返した。

空飛ぶクルマが浮上する様子

2019年8月5日、NEC我孫子事業場

 試作機の大きさは全長3.9×幅3.7×高さ1.3m。離陸質量は150kg未満で、航空機製造事業法の適用範囲外という。炭素繊維強化樹脂(CFRP)のモノコック構造を採用し、人の搭乗は想定しない。開発を担当したNECシニアエキスパートの山下敏明氏は、「モノコック構造を採用することにより、航空機で確立された従来の設計・評価手法を応用できる」と、同構造を選んだメリットを説明した。

 4つのローターはそれぞれ出力30kWのモーターで駆動する。ローターは可変ピッチの機能を備えるが、今回はピッチを固定した状態でデモを見せた。「姿勢制御に使うのはモデルベースのPID制御」(山下氏)という。

ローターの外観
ローターの外観
[画像のクリックで拡大表示]

 航続時間は約5分。リチウムポリマー2次電池をバッテリーに採用した。96個の電池セルを6個ずつ「スタック」としてまとめ、16個のスタックを直列接続している。1スタック当たりの容量は10Ah。公開した試作機は地上の管制室と有線ケーブルで接続しているが、これは非常停止信号を送るものだ。

バッテリーを納めたボックス
バッテリーを納めたボックス
[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、NECが開発に力を入れるのは、空飛ぶクルマの機体そのものではない。同社ナショナルセキュリティ・ソリューション事業部事業部長の岡田浩二氏は「航空宇宙や5G(第5世代移動通信システム)で培った要素技術を生かし、自律飛行に必要な管理基盤を提供するのが(試作機開発の)狙いだ」と話す。

 NECは2018年、空飛ぶクルマを開発する有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」を運営する一般社団法人とスポンサー契約を結び、開発支援を進めてきた経緯がある。今後、同社は試作機を実験場の外に出し、我孫子事業場の敷地内で検証を進める。