NECは、人工知能(AI)を活用してプラントの異常予兆を検知するシステムを開発。JXTGエネルギー(本社東京)の水島製油所(岡山県倉敷市)に納入する(図1、ニュースリリース)。同システムは2019年10月から稼働し、ボイラー設備における異常の早期発見や予兆管理に利用される予定だ。
同システムは、NECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである「インバリアント分析技術」を用いる(図2)。この技術は、設備に設置された多数のセンサーから時系列データを収集・分析し、通常の状態のとき存在するセンサー間の不変的な関係性(インバリアント)をモデル化。ここから予測されるデータの変化と実際のデータを比べることで「いつもと違う状態」、すなわち異常を予兆段階で検出する。異常の発生箇所を特定できるので、状態基準保全(CBM)を実現し、保全の効率化を図れる。
今回のシステムでは、ボイラーの運転を監視・制御している設備にセンサーを設置し、温度や圧力、流量、バルブ開度、水位などに関する約500のデータを収集する。センサー同士の関係性を自動で抽出し、「いつもの状態」として解析・定義。その関係性に変化が起きた際に「いつもと違う状態」として検知し、アラームを発する。
異常の予兆を検知した場合、その影響範囲を絞り込んだり原因を切り分けたりできる。そのため、原因分析にかかる時間の短縮と作業負担の軽減、保全計画の最適化といった効果も期待される。
NECとJXTGエネルギーは同システムについて、同製油所のボイラー設備における過去の運転データを利用して実証を行った。その結果、従来の閾値設定や傾向分析による監視システムと比較して約1週間早く異常の予兆を検知できたという。
製油所や化学工場などの安全を確保するための手段には、消防法や高圧ガス保安法、労働安全衛生法、石油コンビナート等災害防止法のいわゆる「保安四法」などで定められた法定点検がある。だが最近では、より安全性の高いプラント運営が求められており、異常の早期発見や予兆管理を可能にする高度な点検技術の開発・導入が進んでいるという。同システムは、こうした動きに対応するものだ。