「2025年の介護人材は約34万人が不足すると言われている。業務の生産性向上が求められるが、介護施設になかなか情報通信技術(ICT)が定着しない」(コニカミノルタQOLソリューションズの三浦雅範社長)――。
その課題を克服するためコニカミノルタQOLソリューションズは、入居者を認識するセンサーの販売だけではなく技術導入の検討からデータ分析までを支援する新しいサービスを開始した。技術だけを提供する企業は多いが、サポートまで手掛けるのは珍しいという。コニカミノルタQOLソリューションズにとってはセンサー技術を提供する他の企業との差異化の意味もありそうだ。同社の三浦社長はサポートの販売について、「2019年度は50施設、2020年度は100施設を目指す」と話した。

ICTはなかなか介護現場に定着していないのが現状だ。介護施設の管理者は業務効率化のために技術を導入するが、現場で導入の意図が理解されず活用が進まないケースが多いという。介護施設を運営する善光会理事の宮本隆史最高執行責任者は現場に定着しない理由として、「介護施設のスタッフは流動性が高く、年齢層が高い場合もある。全ての職員が機器の操作方法を熟知するのは難しい」と指摘する。
そこでコニカミノルタQOLソリューションズは、システムの販売だけではなく技術導入の検討からデータ分析までの支援にも力を入れる。支援の一環として同社は、IT機器とデータを活用し、業務を効率化する専門の職種である「ケアディレクター」を育成するプログラムを開始する。
コニカミノルタQOLソリューションズによるとケアディレクターとは、基本介護技術を備えた一般スタッフや、指導や管理を行うユニットリーダーよりも上位に位置する人材。ICT機器を活用して適切に現場に情報提供を行ったり、現場の運用を効率化したりする。
ケアディレクターを育成するプログラムの受講者は、対面講義とeラーニングで学習する他、コニカミノルタQOLソリューションズの専属コーチと共に実際の現場で運用する訓練を行う。教育コンテンツは善光会が監修した。プログラム終了後も現場の業務状況はサーバーを介して専属コーチに共有され、ケアディレクターは遠隔でアドバイスを受けることも可能だ。
コニカミノルタQOLソリューションズは、介護事業を手掛けるコニカミノルタの子会社。同社は介護施設の天井に設置した行動分析センサーを活用し、介護業務を効率化するシステム「ケアサポートシステム」を販売している。センサーは介護施設の入居者の起床や離床、転倒などを認識し、スタッフが持つスマートフォンに映像を配信したり通知したりする。スタッフは居室内の状況を把握しやすくなり、次に行うべき行動を判断しやすくなる。これまで居室内の状況は把握しにくく、スタッフは転倒などが起きた後に対応せざるを得なかった。