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 富士通研究所は、東京大学医科学研究所(以下、東大医科研)と進めてきた共同研究において、がんゲノム医療を効率化するAI技術を開発し、実証実験で効果を確認したと発表した。

がんゲノム医療における治療方針の検討作業の位置付け
がんゲノム医療における治療方針の検討作業の位置付け
(図:富士通研究所)
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 がんゲノム医療では、がん患者の遺伝子変異から、病気のなりやすさや薬の反応性、副作用などを予測し、患者ごとに最適な医療を提供する。日本においては、がん遺伝子パネル検査が2019年6月から健康保険適用になったため、がんゲノム医療を希望する患者のさらなる増加が予想される。

 しかしがんゲノム医療では、遺伝子変異に対して医学論文に書かれた過去の症例を参考に治療方針を検討するため、その検討作業に多大な工数がかかっていた。そこで富士通研究所は東大医科研とともに、がんゲノム医療における専門医師の作業をAIによって効率化・高度化するための共同研究を、2018年4月に開始した。

 共同研究では、医学論文中の用語などを文脈から特定する言語処理のAI技術と、ナレッジを医学論文から自動的に抽出して「ナレッジグラフ」と呼ばれるグラフ構造型のデータベースを構築する技術を開発した。これらの技術を活用し、東京大学医科学研究所 血液腫瘍内科において2018年7月~2019年9月の期間で実証実験を実施した。

 実証実験では、開発した技術を用いて、86万件の医学論文からがんゲノム医療ナレッジグラフを構築。構築したナレッジグラフには240万件のナレッジが格納されている。さらに、実際の急性骨髄性白血病の過去の診療ケースを題材に、東大医科研の血液腫瘍内科医4人が構築したナレッジグラフを用いた検索を行い、検討作業の時間を測定した。

技術導入による効果のイメージ
技術導入による効果のイメージ
(図:富士通研究所)
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 その結果、論文全体を解読する負担が軽減され、必要な論文に絞った検討作業が可能になった。従来の検討作業では1件当たり平均で約30分かかっていた検討時間が、この技術を活用することで半分以下に削減できることを確認できたという。

 現在、日本の白血病の年間罹患(りかん)者は1万2000人以上と推定されるので、この技術をすべてに適用したゲノム医療を実施すれば、専門の医師による6000時間の検討作業が3000時間以下に短縮できることになる。

 富士通研究所は、これまでに開発してきたAIの推定理由や根拠を説明する技術を今回の技術に適用し、治療方針の検討作業のさらなる効率化を図る。がんゲノム医療ナレッジグラフの対象を幅広いがん種に広げて、より臨床に近い医療現場での実証も進める。