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 東京都立産業技術研究センター(都産技研)と漆塗り製品の製造・企画・販売を手がけるj's(本社東京)は、ウルシの樹液(以下、漆)と植物繊維のみを使った成形材料「サスティーモ」と加工技術を開発。「産業交流展2019」(2019年11月13~15日、東京ビッグサイト)に出展した(図1・2)。100%バイオマスのカーボンニュートラルな材料である、廃棄される樹木を有効活用できる、天然木から削り出すよりも加工の自由度が高いといった利点がある。既に、開発品で製作した酒器などが販売されている。

図1:成形材料「サスティーモ」と成形体の例
図1:成形材料「サスティーモ」と成形体の例
(写真:日経xTECH)
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図2:j'sが展開する製品の例
図2:j'sが展開する製品の例
(写真:日経xTECH)
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 サスティーモは、漆と植物繊維を加熱・混錬した熱硬化性材料のコンパウンド。今回はウルシの木粉を使った製品を展示したが、例えば竹やスギ、ツバキなど、他の植物繊維も利用できる。接着剤としての性質を備えるものの品質が安定せず、工業材料として扱うのが難しいとされる漆を用いるのが、この材料の最大の特徴だ。

 一般に漆は、採取した季節や時間、場所といった条件によって性質が異なり、採取後も時間の経過とともに品質が変わっていく。そこで都産技研とj'sは、センサーを使ってリアルタイムに漆の硬化度合いを測定する方法を開発。植物繊維との混錬後に加熱して漆を硬化させ、「反応(硬化)の余力が20%ある段階」(j's代表取締役の中山哲哉氏)で処理を止めることで、性質を安定させた。それを粉砕・分粒し、コンパウンド化したのがサスティーモだ。脱酸素剤と共に保管すれば、性能を2年間保てるという。

前処理なしで漆塗り

 この材料を金型に詰めて圧縮成形し、素地(成形体)を造る。木材から削り出す従来の漆器よりも複雑な形状を実現できる。その後、漆塗りを施すが、このとき成形体に含まれる漆がアンカー効果を発揮するので、塗料として使われる漆との密着性も高い。従来の漆器の製法では漆を定着させるために前処理が必要だが、サスティーモの成形体には直接、漆を塗れる。熱処理によって塗膜を硬化させれば、酵素の働きでゆっくりと固まる従来の漆器に比べて、傷もつきにくくなる。

 さらに、熱分解温度が295℃と耐熱性にも優れることから、成形後、レーザー加工機などによる2次加工も可能。複雑な形状のアクセサリーや文具の他、家電部品や建材にも応用しやすい。

 中山氏によると、漆を採取した後のウルシの木は、触れるとかぶれる恐れがあるため使い道がなく、植林が増えるにつれてその処理が課題になっているという。サスティーモで伐採後のウルシを活用できれば、その解決を図れる。j'sはサスティーモで造った漆器を「刻漆」(ときうるし)ブランドで展開。自社で販売する他、OEM(相手先ブランド名での製造)でも提供している。