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 三菱自動車工業は多目的最適化計算による設計手法開発を目的に、スーパーコンピューターを利用して20ケースの設計案を7世代分進化(設計変数を調整)させる大規模計算を実施した。システム構築を支援したヴァイナス(本社大阪市)が発表した。三菱自動車工業は日本自動車工業会のプロジェクトの1つとして取り組み、2019年秋にヴァイナスのユーザー会で事例として発表した。

 この計算では、車体の空気抵抗係数(Cd値)と、フロントグリルの直後にある熱交換機を通過する風速の2つを目的関数として、車体周りの空気流れを流体解析によりシミュレーションした。これら2つの値は互いにトレードオフの関係にあり、両立が難しいとみられていた。車体の設計変数は当初22個定義したが、準備計算として実験計画法により140ケースの設計案について計算し、これらを1回進化させて再度計算を実行。2世代で合計280設計案で設計変数の感度を調べた。その結果により、有効とみられる12個の設計変数を選んだ。

 本番計算では、この12個の設計変数を変更してフロントグリル開口部の形状などを調整しながら、20ケースの設計案を7世代にわたって進化させ、140設計案の計算を実行(図1、2)。これにより、ベースとなる設計案よりもCd値と熱交換機通過風速の両方が向上する設計案と、それらのパレート解(限界まで向上させた設計案の集合)を得た(図3)。

図1 フロントグリルの形状
図1 フロントグリルの形状
開口部の形状を表す設計変数を調整しながら設計案を進化させる。(出所:三菱自動車工業、ヴァイナス)
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図2 熱交換機周りの空気の流れ場
図2 熱交換機周りの空気の流れ場
熱交換器を通過する風速が冷却効率を左右する。これと車体のCd値は両立が難しいとされていた。(出所:三菱自動車工業、ヴァイナス)
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図3 準備計算280ケース(<span style="color:#AA2A27;">▲</span>)+本番計算140ケース(<span style="color:#7fA335;">●</span>)の設計案の特性
図3 準備計算280ケース()+本番計算140ケース()の設計案の特性
ベースとなる設計案に比べ、2つの特性が同時に向上する左上方向の解を得られた。さらに、パレート解(2つの特性をそれ以上同時には向上できない限界の解)と見られる線を得られた。(出所:三菱自動車工業、ヴァイナス)
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 設計案の進化と解析計算は自動で実行。解析ソルバーはオープンソースの「HELYX」を利用し、その計算結果に基づいて「iDIOS CHEETAH」(宇宙航空研究開発機構の開発ソフトをヴァイナスが商用化)により設計案を進化。「New Sculptor」(米オプティカルソリューションズソフトウェア)により設計変数に対応した形状を生成(形状変更)し、再びHELYXで解析計算を実行するループを自動で回すシステムを構成した。計算にはスーパーコンピューター「京」を使用した。