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 富士ゼロックス(本社東京)は、接着機能を持つ無色透明のトナーを開発した(ニュースリリース)。開発品を従来のトナーと同様に複合機やプリンターへ搭載し、“印刷”した後に圧力をかけると、接着力が発現する(図1)。印字と同時に接着領域を出力できるので、従来は印字後に別工程として実施していたのり付けが不要になる。圧着はがきなどへの応用が見込まれる。

図1:開発したトナーの仕組みと活用例
図1:開発したトナーの仕組みと活用例
用紙上に従来のトナーと新開発のトナーを同時に印刷できる。加圧して接着力を発現させることで、冊子などを造れる。(出所:富士ゼロックス)
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 開発品は、ベースとなる乳化重合樹脂に微細な圧力応答性樹脂の粒子を分散させて造る。圧力応答性樹脂は圧力をかけると溶けて、同時に周囲の乳化重合樹脂も溶かし、のりのような状態にする。すなわち、2つの樹脂の分子同士が混ざり合うと同時に、紙の繊維の隙間に入り込み、接着力を発現する。開発品を印刷した接着領域に紙を重ね、市販のシーラー(ローラーの間に接着したい紙などを通す機械)などで数十MPaの圧力をかけると、用紙同士を接着できる。「圧力で溶ける一方で、電子写真方式での現像や定着の熱では溶けない材料を開発した」(画像形成材料事業部材料技術開発統括グループ統括グループ長の二宮正伸氏)のが開発上のポイントという。

 接着力を開発品の量や印刷面積、シーラーでの圧力のかけ方の強弱といった条件により制御可能であり、接着箇所は開発品をどこに印刷するかで自由に設定可能。これらにより様々な用途が考えられるとしている。例えば、用紙の端部に接着領域を設けて複数の用紙を接着すると、冊子や封筒を造れる(図2)。圧着はがきに使う場合は、印刷面全面に開発品を塗り重ねても印刷の品質が低下せず、接着後に剥がして開封する際に印刷の内容を壊さないようにできる(図3)。一度接着して剥がすと再び接着できないようにしてあり、第3者が内容を盗み見て元に戻すのを防げるという。

図2:接着機能を持つトナーで作った冊子
図2:接着機能を持つトナーで作った冊子
強い冊子にできる一方、弱く接着して紙を1枚ずつ剥がせる「日めくり」のようなものも作れる。(写真:日経クロステック)
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図3:圧着はがき
図3:圧着はがき
印刷面全面に開発品を塗り重ねた。圧着前は手で触ってもべたべたしない。一度開けると再び接着できないようにしてあり、第3者が内容を盗み見て元に戻すのを防げるという。(写真:日経クロステック)
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 製造には、通常のトナーを同社が造るときの「EA(Emulsion Aggregation)製法」(乳化重合法)を応用。乳化重合樹脂と圧力応答性樹脂をそれぞれ水分散液にして相互に混ぜ、微細な凝集体をつくり、これを加熱して乳化重合樹脂を溶かして粒子にする。通常のトナーでは顔料やワックスを入れるところを、開発品では圧力応答性樹脂に置き換えた。一連の化学反応を精密に制御することで、砕いてつくる混練粉砕法に比べて粒径が小さく、かつ形状が均一なトナーを実現できるとしている。

 同社は、開発品を「新機能材料展2020」(2020年1月29~31日、東京ビッグサイト)に参考出展する。来場者の意見を聞き、既存の印刷市場にとどまらずに新規の市場開拓につながる研究開発を加速する考え。