低コスト、燃えない、設計の自由度が高いーー。そんな三拍子が揃った夢のLi(リチウム)イオン2次電池の量産が始まる。三洋化成工業とベンチャー企業のAPBは2020年3月2日、ほぼ全てを樹脂で構成する新型リチウムイオン2次電池「全樹脂電池」の量産工場を、福井県越前市に新設すると発表した。2021年に量産を開始する見込みで、同年後半には出荷開始を予定する。今後3~4年で年間生産電池量1GWhを目指し、「5~10年で数千億円規模の事業にしたい」(三洋化成工業 代表取締役社長の安藤孝夫氏)と意気込む。

左から順に、三洋化成工業 代表取締役社長の安藤孝夫氏、APB代表取締役CEOの堀江英明氏、福井県知事の杉本達治氏
左から順に、三洋化成工業 代表取締役社長の安藤孝夫氏、APB代表取締役CEOの堀江英明氏、福井県知事の杉本達治氏
手に持っているのは全樹脂電池のサンプル。(撮影:日経クロステック)
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 製造する全樹脂電池はB to B用途を想定しており、主にエネルギー事業者などが長期間利用する「定置用電池」だとする。欧州などでの再生可能エネルギー需要の拡大に伴い、余剰に発電した電力を蓄えるための蓄電池が注目されており、「定置用電池市場は今後5年間で5倍以上に拡大する見込み」(APB代表取締役CEOの堀江英明氏)。

 しかし、現時点では石油などの化石燃料による発電よりも、再生可能エネルギーと電池を組み合わせたシステムの方がコストが高くなってしまうのが課題だという。堀江氏は「全樹脂電池の量産化によって電池のコストを引き下げ、再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせの方がコストを安く抑えられるようにしたい」と話す。

固い地盤と港の近さで選定

 新設する工場の建屋と用地として、電子機器メーカーである新生電子の武生工場を取得する。敷地面積は2万3733m2、延べ床面積は8627.96m2。新たに工場の建屋を建設するわけではなく、既存の建屋をそのまま利用する。

 選定理由について堀江氏は「重要だったのは、沈降などのない固い地盤であること。加えて、海外輸出を考えているため、アジア圏に船で出荷しやすい日本海側であることも決め手の1つになった」と話す。

 全樹脂電池を量産する設備設計は、三洋化成工業の愛知県内の工場で検証しており、すでに妥当性を確認済みとする。現在検証で利用している生産設備を順次新しい工場へ搬入し、クリーンルームなど必要な設備を増設して整えていく。

 2021年には量産を開始する。量産開始時は小規模にとどまり、生産ラインに人手が必要な部分を含むが、徐々にすべての生産ラインを自動化していく予定である。工場の新設に際して数十億円規模での追加投資を実施するとみられ、「今後、敷地内で建屋の増設などもあり得るかもしれない」(安藤氏)など、量産体制の確立に向けて積極的に取り組む姿勢を見せた。