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 関西大学などは、工業材料の内部の硬さ分布を3D解析するシステム「シリアルセクショニング法による硬さ計測型3次元内部構造顕微鏡システム」を開発した(図1、ニュースリリース)。新システムを活用して構造物の硬さや強度の分布を可視化することで、鉄鋼製品の安全性向上を図れる。関西大学システム理工学部機械工学科の古城直道准教授と廣岡大祐准教授、理化学研究所光量子工学研究センター画像情報処理研究チームの横田秀夫チームリーダーらの研究グループによる成果だ。

図1:「シリアルセクショニング法による硬さ計測型3次元内部構造顕微鏡システム」の外観
図1:「シリアルセクショニング法による硬さ計測型3次元内部構造顕微鏡システム」の外観
(出所:関西大学)
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 新システムは、試料の切断と光学顕微鏡による観察を繰り返す「逐次断面切削観察システム」に、微小硬さ〔9.8N(約1kgf)以下の試験力で測定した際のビッカース硬さ。マイクロビッカース〕の計測装置を搭載しており、素材内部の微小硬さ分布を3Dで可視化できる(図2〜4)。微小硬さの計測部は、分解能が1nmで感度が0.1mN(約10mgf)のステージと微小力センサーを備える。

図2:新システムの微小硬さ計測部
図2:新システムの微小硬さ計測部
(出所:関西大学)
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図3:新システム全体(左)と微小硬さ計測部(右)の構造
図3:新システム全体(左)と微小硬さ計測部(右)の構造
(出所:関西大学)
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図4:3D硬さ分布のイメージ)
図4:3D硬さ分布のイメージ)
(出所:関西大学
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 本体である逐次断面切削観察システムも同研究グループが開発してきたもので、鏡面加工と撮像を1μm以下の精度で制御できる。それまでは、高硬度な材料の場合は断面の観察が難しいなどの課題があったが、同観察システムでは、高精度な断面の作製から撮像、3D情報の取得までを自動化し、観察の手間を減らしている。

 一般に工業部品の強度や疲労破壊特性は、素材内部にある析出物や混合組織の組成、形状、分布などによって決まる。それらを観察する方法が、試験片の切断と顕微鏡観察を繰り返す逐次断面切削観察法(シリアルセクショニング法)だ。表面を少しずつ削り落としながら観察を進めていくため、取得した複数の断面画像をコンピュータで処理すると内部構造を3Dで観察できる。しかし、顕微鏡観察で得られるのは表面の輝度や発色の違いといった情報に限られ、素材内部の様子は分かっても、それぞれの構造物がどのような硬さや強度を持っているかは同定できなかった。

 そこで研究グループは今回、逐次断面切削観察システムに微小硬さ計測部を搭載するとともに、安定した解析が可能な制御方式を確立。高島産業(長野県茅野市)の協力を得て、鏡面加工と断面ミクロ組織の観察、微小硬さ計測を多断面にわたって実施するシステムを開発した。コンピューターシミュレーションと組み合わせれば、材料内部の正確な応力解析が可能だとする。

 なお、今回の研究は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のプロジェクト「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」において展開したもの。研究グループは新システムについて、2019年11月29日付で特許(出願番号:特願2019-216087)を出願している。