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 日立製作所とYAMAGATA(横浜市)、京都機械工具(以下、KTC)の3社は共同で、拡張現実(AR)技術を利用した鉄道車両向けボルト締結作業管理システムを実用化した(図1日立のニュースリリースYAMAGATAのニュースリリースKTCのニュースリリース)。作業者が装着したヘッドマウント型ディスプレーにボルトの締結位置や締結力を表示するとともに、自動で作業内容を記録し、作業効率の向上を支援する。

図1:新システムを活用したボルト締結作業のイメージ
図1:新システムを活用したボルト締結作業のイメージ
(出所:日立製作所)
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 新システムは、ヘッドマウント型ディスプレーに搭載したカメラで締結作業を常時監視。KTCのデジタルトルクレンチ「デジラチェ[メモルク]」と連携し、指定のボルトが規定の力で締められたか否かを自動で判定する(図2)。作業が指定された通りに実施されれば次の作業指示を表示する一方で、指定外のボルトだったり締結力に過不足があったりした場合は、再度作業するように誘導する。

図2:新システムで使用する「デジラチェ[メモルク]」と「Microsoft HoloLens2」
図2:新システムで使用する「デジラチェ[メモルク]」と「Microsoft HoloLens2」
(出所:YAMAGATA)
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 鉄道車両の製造においては、機器類を固定するボルトが走行中に緩まないように、確実にボルトを締結し、その結果を記録する必要がある。そこで日立の製造現場では従来、デジタルトルクレンチとタブレット端末を使って締結力の判定と記録を行うシステムを構築・利用していたが、さらなる作業効率と品質の向上を目指し、3社は新システムを開発(関連記事)。現場での実証を通して技術・運用面での課題を抽出・評価し、今回、日立の鉄道ビジネスユニット笠戸事業所(山口県下松市)構内の鉄道車両製造現場に導入した。

 従来のシステムは、指定されたボルトと実際に締結したボルトが一致しているかを自動で判定できず、人手による複数回の確認作業を必要としていたが、新システムの導入によってこの手間を減らせる。作業者はヘッドマウント型ディスプレーを通した視界上で作業内容などを確認できるため、タブレット端末と作業箇所を見比べなければならない従来のシステムより負担が少ないという。

 一般にAR技術を利用したシステムを運用するには、3D設計データやコンピューターグラフィックスなどの用意が必要とされる。それに対して新システムでは、ボルトの位置座標と締結力から成る表形式のデータを用意するだけで済む。加えて、熟練者の作業を記録したデータをAR作業指示データとして再利用できるので、製造だけでなくメンテナンスや修繕の現場に対応させやすい。

 日立は今後、新システムの適用範囲を段階的に拡大し、鉄道車両の製造作業の効率化と品質の向上を図る。YAMAGATAは、新システムを「ARDe」(アルデ)という名称で汎用化。作業員の技術向上や技能伝承に向けたARソリューションとして、開発を継続する。