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 九州工業大学と三省製薬(福岡県大野城市)は2020年4月15日、竹から化粧品の美容成分と電気自動車(EV)向け電気2重層キャパシター(EDLC)の電極材料を得る共同研究プロジェクトを本格始動させる。同プロジェクトで採用するプロセスは、バイオマスを出発原料に用いて段階的に2つの製品を製造できる上、環境負荷が小さいのが利点。竹を高付加価値製品として活用して竹害の解決も図れる。2023年4月の事業化を目指す。

 同プロセスでは、竹の表皮を削って取り出した竹の“幹”の部分を原材料に使い、まずオリゴ糖を抽出し、次いで活性炭を造る(図)。三省製薬はオリゴ糖の活用に関する研究開発を担当する。九工大は大学院工学研究院物質工学研究系の坪田敏樹准教授の研究室が、活性炭を電極材料に用いるための研究開発に当たる。同准教授は約10年にわたりEDLC用電極材料の開発に取り組んできた。

図:共同研究プロジェクトの概要
図:共同研究プロジェクトの概要
(出所:九州工業大学)
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 具体的には、九工大が竹幹を200℃で加圧熱処理して、竹の中のヘミセルロースをオリゴ糖に変換した水溶液を生成する。三省製薬は、その水溶液からオリゴ糖の1種であるキシロオリゴ糖を抽出し、美容成分への応用を図る。九工大は、前述の加圧熱水処理を実施した後、セルロースやリグニンを主成分とする固体残さから活性炭を造り、電極用炭素材料の製造に取り組む。

 三省製薬は既に、福岡県と九州大学との産学官連携プロジェクトの下、福岡県八女市産の竹の表皮を使い美白美容成分の抽出に成功。「yameKAGUYA」シリーズとして製品化している。さらに今回、竹幹から抽出したキシロオリゴ糖から美容成分を造り、同シリーズへの配合を狙う。

 一方の九工大は従来、電極材料の開発において、活性炭をはじめとする表面積の広い炭素材料を用いて、表面積や細孔径、導電性などの物性を最適化してエネルギー密度の向上を図ってきた。今回の産学連携プロジェクトでは、危険な試薬を使わずに、竹から比表面積の大きな活性炭を作製できたという。

 バイオマスを別の用途に使うカスケード利用としては、例えばサトウキビから黒糖を抽出し、その後に燃料や肥料・飼料にするように、高レベルの利用から低レベルの利用へと活用するのが一般的だ。それに対して今回のプロジェクトでは、バイオマスから分野の異なる高付加価値製品を段階的に製造する。これについて九工大は「高付加価値創造型の『カスケード利用』として、循環型社会への一助になる」とみる。前述のプロセスでヘミセルロースをオリゴ糖に変換する際に使うのは水だけのため、安全性が高く環境負荷が少ないのも利点とする。

 同プロジェクトは、ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団(通称:キューテック)から5カ年計画での助成金を受けている。九州地方では、放置された竹林が周囲の環境に害を与える問題が顕在化しており、同プロジェクトによって竹を高付加価値製品として活用できれば、竹害の解決にもつながる。