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 米Qualcomm(クアルコム)は2020年3月31日、「5G NRベースのサイドリンク(sidelink)が5G C-V2X活用の新ユースケースを強力に支援する」とするコラムを公開した(Qualcommのブログ)。

 C-V2X(Cellular-Vehicle-to-Everything)については、V2V(Vehicle-to-Vehicle:車両間通信)、V2P(Vehicle-to-Pedestrian:車両と歩行者間通信)、V2I(Vehicle-to-Infrastructure:車両とインフラ間通信)などを使った自動車の安全性向上、輸送機能の改善、効率化を目的に、数十年にわたる研究と標準化作業が進められてきた

 C-V2X対応の自動車は、カメラやレーダー、ライダーなどのセンサー類を搭載してのLOS(Line-of-Sight:視界内)感知に加えて、360度のNLOS(Non Line-of-Sight:視界外)認識可能な短距離直接通信モードに対応。これにより、見通しの悪い交差点や悪天候でも、潜在的な危険を予測可能となる。さらに、短距離直接通信に加え、長距離用に移動通信ネットワーク、クラウド環境を活用することで、さらなる安全性の確保、交通効率改善が実現可能となる。

 Qualcommでは、世界各地の通信および自動車関連企業と連携して、C-V2Xの実証実験を推進。その結果、欧米や中国、日本、韓国、オーストラリアなどでの採用に向けた活動が本格化し、米国では、FCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)による5.9GHz帯のITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)周波数帯のC-V2Xへの割り当てを見越した開発が進行。欧州では、C-V2XをETSI (European Telecommunication Standardization Institute:欧州電気通信標準化機構)が認証するC-ITS(Cooperative Intelligent Transport System、協調高度道路交通システム)のアクセス層技術として採用する旨の新欧州規格(European Standard、EN)策定も進んでいる。

世界のC-V2Xトライアル、デモ実施状況
世界のC-V2Xトライアル、デモ実施状況
出所:Qualcomm
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 ところで、現在V2Vアプリケーションとして一般的に提供されているものには、次のようなものがある。

  • 前方クラッシュ警告(Forward Crash Warning、FCW)
  • 交差点移動アシスト(Intersection Movement Assist、IMA)
  • 死角警告、車線変更警告(Blind Spot Warning/Lane Change Warning、BSW/LCW)

 路側機(roadside unit、RSUs)とともに使用するV2Iアプリケーションとしては、信号の状態などを通知するSignal Phase and Timing(SPaT)関連の一般的なアプリケーションとして、次のようなものがある。

  • 交通信号優先度制御システム(Transit Signal Priority、TSP)
  • 最適速度アドバイスシステム(Optimal Speed Advisory、OPA)
  • カーブ時速度警告(Curve Speed Warning、CSW)
  • 緊急車両優先システム(Emergency Vehicle Preempt、PREEMPT)
  • 横断歩道歩行者注意喚起(Pedestrian in Signalized Crosswalk Warning、PED-X)

 C-V2Xとしては、3GPPリリース14で、こうしたV2V、V2P、V2Iの、短距離直接通信モードの標準化を完了。リリース15では、遅延ダイバーシティー(cyclic delay diversity)を追加することで、完全互換性を保ちながら、直接通信モードの性能改善を実現している。リリース16の5G NR C-V2X直接通信モード(sidelink)では、デフォルトの動作モードをブロードキャストから信頼性の高いマルチキャスト通信に移行。加えて、高精細度地図のリアルタイム更新や、車載カメラ、レーダー、ライダーからの高スループットのセンサー情報取得、情報の車両間での共有も可能になり、自動運転に向けてさらに機能強化される予定だ。

より高度なユースケースをサポートする5G V-C2X sidelink
より高度なユースケースをサポートする5G V-C2X sidelink
出所:Qualcomm
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 さらに、3GPPリリース16のNR C-V2X sidelinkでは、低遅延高信頼性に加えて、ポジショニング機能などの機能も強化。これらは広帯域搬送波に加え、サブキャリア間隔の拡張性が高いOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)ベースの無線インターフェースや、スロットベースのフレームワーク、DMRS(Demodulation Reference Signals:復調用参照信号)を使った高速化、高度なチャンネル符号化などの5G NR機能を活用して実現している。さらに、NR C-V2X sidelinkでは時間同期もサポートしているため、GPSカバレッジ外の場所でも運用可能となる。C-V2Xは、こうしたリリース14、15からの技術と、新しいリリース16のNR C-V2X sidelinkを組み合わせることで、基本的な安全機能に加え、より高度なアプリケーションや自動運転にも対応する5G C-V2Xソリューションを提供する。

5G C-V2Xの位置付け
5G C-V2Xの位置付け
出所:Qualcomm
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 現在、自動車業界では急激に移動通信技術導入を進めている。米Strategy Analyticsの調査では、北米、欧州、中国の世界3大自動車市場において、最新の自動車の60%に携帯電話接続機能があり、2025年には85%に達するという。欧州では自動緊急通報システム(eCall)が採用開始され、運輸業界も自動車業界と連携して、C-V2X技術を使った安全性と交通効率の定量的な改善に乗り出している。C-V2Xも今後、より高度な画像センサーとAI、高度な路側機などを組み合わせることで、さらなる道路の安全性向上を実現すると同時に、自動運転や付加的なサービスを含む、真に高度な交通システムを目指していく。