富士通研究所(川崎市)は、従来品に比べて使いやすさを高めたカーボンナノチューブ(CNT)接着シートを開発した(図1ニュースリリース)。CNTを同じ向きにして配列を保持したままラミネート加工しており、ハンドリングや裁断加工がしやすい。熱伝導率が最高で100W/mKと高いため、放熱材料として電気自動車(EV)向けパワーモジュールに実装するなどの利用が見込める。

図1:新開発のCNT接着シート
図1:新開発のCNT接着シート
(出所:富士通研究所)
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 開発品は、CNTを立たせて並べた状態で上下からラミネート層で挟み、CNTを保護する構造。ラミネート層は保護シート層と接着層の2層から成る(図2)。これにより、CNTの弱点とされる形状の崩れやすさを補い、放熱材料として扱いやすくした。

図2:CNT接着シートの積層構造(左)と多層CNT(右)
図2:CNT接着シートの積層構造(左)と多層CNT(右)
(出所:富士通研究所)
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 さらに、CNTと樹脂の境界面における熱抵抗に関する知見を生かし、樹脂による接着性と熱伝導性の両立を図った。接着層を形成するのは厚さ数μmの樹脂だが、わずかな量でも樹脂は熱抵抗の要因になる。そこで、CNTの密度や樹脂の種類・厚さ、接合条件といった3つ以上の相関パラメーターを最適化し、CNTの熱伝導性をなるべく損なわずに十分な接着性を発揮できるようにした。境界面の熱抵抗を含めた熱伝導率の実測結果は最高で100W/mKと、既存のインジウム系放熱材料の3倍の熱伝導率を確認できたとする。

 同社は2017年に、CNTを用いた高熱伝導シートを開発したと発表している(関連記事)。銅の約10倍の熱伝導率を持つCNTをシート状に成形すれば放熱材料としての活用が期待できる、としていた。しかし、シート形状を保つために、2000℃以上の超高温下で焼成成形していた影響で、シートが硬くなっていた。硬いCNTシートは、凹凸の大きな材料同士の接合には使いづらかったが、新開発品ではこの点を改良した。

 同時に、接着性の不足も改良した。半導体素子周りで使う場合、熱による半導体素子の変形に追随するために、半導体と冷却部を放熱シートを介して接着させる必要がある。一般にCNTに接着性を持たせるには、樹脂やゴムなどの粘着素材にCNTを混ぜてシート化する手法を用いるが、こうした粘着素材は熱伝導率が低く、熱伝導性と接着性を両立させるのは難しかったという。