物質・材料研究機構(NIMS)は、機械学習を用いて「世界最高性能」(NIMS)の水素液化向け磁気冷凍材料を発見したと発表した(ニュースリリース)。国際ナノアーキテクトニクス研究拠点グループリーダーの高野義彦氏、主任研究員の寺嶋健成氏、大学院生のカストロ・ペドロ氏らのグループによる研究で、水素の液化温度付近において二ホウ化ホルミウム(HoB2)が非常に大きなエントロピー変化を示すことが分かった。磁気冷凍装置にHoB2を組み込めば、液化水素の製造コストを削減できる見通しだ。

 磁気冷凍は、磁性体の磁気熱量効果を応用した冷凍方式()。一定温度の下で磁性体に磁場を加えると、磁気モーメントが磁場方向に向いてエントロピーが減少する。それとは逆に、断熱状態にして磁場を取り除くとエントロピーが増大し、その変化分のエネルギーが吸収されることで温度が下がるという原理だ。50%以上の液化効率が期待できることから、水素を液化して貯蔵・運搬する技術としての利用が見込まれている。

図:磁気冷凍の原理
図:磁気冷凍の原理
(出所:NIMS)
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 研究グループは今回、機械学習を用いて高性能な磁気冷凍材料を探索した。まず、エントロピー変化が既知である約1600の物質データを論文から集め、それらの組成とエントロピー変化の関係を学習させた。その学習を基に、エントロピー変化が未知の約800の強磁性体についてエントロピー変化を予想させたところ、比較的高い値を示す34の候補物質が見つかった。さらに、候補物質の中から2元素で構成される材料を抽出した上で、最も高い値が予想された物質を実際に合成し、評価した。

 その結果、水素液化温度である−253℃(20K)付近では、HoB2がΔS=0.35(J/cm3)のエントロピー変化を示すことを発見した。HoB2を磁気冷凍装置に組み込めば、水素液化温度付近で高い冷凍能力を得られるという。

 NIMSによると、水素燃料の普及を妨げる要因の1つに、液化水素の価格の高さが挙げられる。これは、水素の液化温度が−253℃と低いため、従来の気体圧縮式の冷凍装置ではコンプレッサーなどの損失が大きくなり、液化効率が25%程度にとどまるのが理由だという。それに比べて磁気冷凍は液化効率が高く、水素液化温度付近でのエントロピー変化がより大きな磁気冷凍材料が求められていた。

 研究グループは今後、HoB2を粒状・線状に加工する、耐水素コーティングを施すなど、磁気冷凍装置で活用するための研究を進め、高効率な水素液化装置の開発を目指す。

 今回の研究は、科学技術振興機構の未来社会創造事業における研究開発課題「磁気冷凍技術による革新的水素液化システムの開発」の一環として実施した。