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 米Qualcomm(クアルコム)は2020年5月12日、5G時代のIoTに向けた技術動向を解説するコラムを自身のブログに投稿した(Qualcommのブログ)。以下はその概要となる。

 5G時代の幕が開き、スマートフォンをはじめ、さまざまな機器が5Gに接続されるようになった。5Gの通信能力や効率性を利用する、既存の移動通信エコシステムを超えた活用も多様な分野で始まっている。2035年までに5Gが世界の販売活動を13.2兆米ドル上乗せするとするデータもあり、Qualcommでも5G時代のIoTに向けて、さらに密接につながる(hyper-connected)未来を目指したコネクティビティーの仕組みづくりを進めている。

2035年までに5Gが世界の販売活動を13.2兆米ドル上乗せ
2035年までに5Gが世界の販売活動を13.2兆米ドル上乗せ
出所:Qualcomm
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 現状では、ほとんどのIoT機器で、中央制御型のクラウドに接続する形式がとられている。この場合、センサーなどのIoT機器は、加工されていない生データを収集して送信し、クラウド側でそれらの情報処理と意思決定を行う。5Gの普及によりIoTの急激な成長が予想される。最近のMcKinseyの調査でも、2023年までには430億台のデバイスがネットワークと接続するようになるという。ネットワークに大量の機器が接続するようになると、これまでのような中央制御型クラウドにデータ送信するモデルでは、効率的な処理は難しい。特に産業オートメーションなど、厳格なプライバシー保護のため、機密データをローカルに保管する必要がある分野では、クラウドでの処理は困難となる。こうした要件に対応するためにも、IoTには新しい分散型のシステムを導入する必要がある。データは端末内やエッジクラウド上でAIを使って処理し、通信は低遅延・大容量な5Gで行う「インテリジェンスワイヤレスエッジ」を採用することで、プライバシーを強化しつつ、さらに効率的なIoTを実現することが可能になる。

IoTの効率的な拡大には情報処理の分散化が不可欠
IoTの効率的な拡大には情報処理の分散化が不可欠
出所:Qualcomm
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 5G標準仕様の第1弾を定めた3GPPリリース15では、モバイルブロードバンドの高速大容量化(enhanced mobile broadband、eMBB)を中心に5G NR技術の基礎固めが行われた。リリース16では、新しい分野への対応も念頭に、超高信頼低遅延通信(enhanced ultra-reliable low latency communication、eURLLC)のほか、免許不要周波数帯の活用やプライベートネットワークによる柔軟なネットワークサービス支援などが検討されている。これにより、これまで有線で対応していた産業オートメーションの無線化など、Industry 4.0に向けた環境改善も可能となる。資産管理などに向けて、既存のGNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)などの位置確認サービスを補完する、さらに信頼性の高いポジショニング技術の検討も進められている。

5G NRを使ったIoT拡張に向けたリリース16の検討
5G NRを使ったIoT拡張に向けたリリース16の検討
出所:Qualcomm
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 5G時代には、環境モニタリング用のセンサー類や電気、ガス、水道用のメーターなど、何十億ものIoT機器を効率的に接続できるようになる。こうしたIoT機器には、多少の遅延が許される代わりに、構造を簡素化して、電力効率を向上することが求められるものもある。3GPPリリース16では、帯域幅200kHzで通信可能なNB-IoTや、同1.4MHzで動作するeMTC(enhanced Machine Type Communication)にさらなる機能追加と効率性向上を行い、5G基幹ネットワークや5G周波数帯での5G NRでも動作可能な仕様追加を行っている。これにより、5G上でNB-IoTやeMTCを実現する「5G massive IoT」が可能となる。

 リリース16ではこのほかにIIoT(Industrial Internet of Things:産業向けIoT)など高性能なIoTに向けた仕様検討も行っているが、リリース17では産業向けカメラ、ハイエンドのウエアラブル製品、低価格のスマートフォンといった比較的構造が複雑でない機器類のさらなる電力効率向上を実現する「5G NR-Light」の検討を進めている。

比較的構造が簡素なIoTに向けた5G NR-Light
比較的構造が簡素なIoTに向けた5G NR-Light
出所:Qualcomm
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 このNR-Lightのみならず、5G NR全体でも、下記のような検討が進められている。

  • 通信手段の簡素化:サブ7GHz帯で帯域幅10~20MHz、シングルRX、半二重通信(half-duplex)といった簡素な通信方式を採用する機器類のサポート
  • 電力効率の改善:PSM(Power Saving Mode)やeDRX(extended Discontinuous Reception)といった技術を使った低消費電力機能の強化
  • ネットワーク効率の改善:半二重通信と全二重通信(full-duplex)両方に対応する機器類をサポートすることで、伝送時のオーバーヘッドを削減
  • カバレッジの最適化:カバレッジ改善に有効なレピテーション、バンドリングなどの技術、サイドリンク(機器同士の直接通信機能)を活用することで、複雑さを軽減しながらカバレッジロスを解消

 IoT機器の大規模接続を実現するためには、効率化と同時にセキュリティーも考慮する必要がある。Qualcommでは、IoT向けチップセットに加え、各種セキュリティー機能を備えたワイヤレスエッジサービスを用意することで、顧客がIoTソリューション構築に集中できる環境を提供する。

 今後は、大量のIoT機器が生成する膨大なデータに対処するために、新たな形のデータ管理手法が必要になる。機器類の管理だけでなく、データの所有権、出所、データのアクセスと管理に関する各種規制なども用意する必要がある。Qualcommでは、こうした問題に対応するために、暗号化したままデータの処理が可能な順準同型暗号(homomorphic encryption)の研究を進めている。

 リリース17以降も、IoTに向けた機能強化は進んでいく。今後10年間のうちに、5GとAIを原動力として、多様な高度なデバイスがネットワークにつながる「intelligent connectivity」の時代がやってくる。人とデバイスがより密接に結びつくこうした時代に、無線技術はさらに進化をし続ける。Qualcommでは、今後もその先の6Gの時代を見据えて、イノベーション推進に向けた活動を進めていく。

「intelligent connectivity」の時代とその先の6Gに向けた今後の5Gロードマップ
「intelligent connectivity」の時代とその先の6Gに向けた今後の5Gロードマップ
出所:Qualcomm
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