アズビルは、製造・検査・メンテナンス現場での作業記録をデジタル化するクラウドサービス「現場でつくる作業記録サービス」を開発し、プレビュー版の提供を開始した(図1、ニュースリリース)。パソコン上での簡単な操作だけで、スマートフォンやタブレット端末向けのWebアプリケーションを構築できる。正式版の提供を始める2020年7月までは、無料で使える。
作業記録アプリの操作画面を作成する際は、パソコン上で点検・検査項目を設定する(図2)。リストから項目を選んでドラッグ&ドロップ操作で並べたり、文字を入力したりといった簡単な操作で済み、プログラミングやデータベースの知識はいらない。作業の実務者が自ら必要な記録項目を選んでいけば、現場の状況に即した実用的なアプリを実現できるという。
作業現場では、スマートフォンやタブレット端末を使って作業内容や結果を記録すると同時に、デジタルデータとしてクラウドサーバーに保存していく。記録方法は、文字入力や一覧からの選択の他、QRコードの読み込みによるデータ取得、写真撮影などに対応する。作業の開始/終了時刻や経過時間を作業ごとに自動で記録する機能も利用できる。工程ごとのタクトタイムやバラツキを把握することにより、作業効率の管理と改善を図れる。GPSを基にした位置情報の記録機能も搭載する予定。
入力したデータは、CSV形式で出力できる。Excelや各種BIツールに取り込めば、品質管理や稼働管理などの集計・分析効率が高まる。さらに、MES(Manufacturing Execution System)などのシステムと連携させることで、製造指図にのっとった工程進捗や、機械と人の作業情報を統合したトレーサビリティーの可視化といった製造現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できるという。
セキュリティー対策として、ユーザーごとにアクセス可能なIPアドレスを設定し、その企業のネットワーク外からのアクセスを防ぐ。アカウントのロックアウト機能や強固なパスワードの設定など、リスクを低減するための設定にも対応する。加えて、ユーザー別に記録データを分離して暗号化し、当該ユーザー本人だけがアクセスできるようにしている。
工場の製造・検査・設備点検現場での記録作業が手書きでは、記録した紙の管理やデータ分析、報告・活用のための転記、集計などに多くの手間と時間がかかる。その上、記録データのリアルタイム性や信頼性が低く、うまく活用できていないケースもある。そのため、作業記録をデジタル化する動きもあるが、従来は新たなシステム開発やプログラミングが必要で、DXの障壁になっていた。
それに対して新サービスは、システム構築やプログラミングは不要で、契約後すぐにインターネット経由でサービスを利用できる。従来の社内システムの構築に必要だったサーバーの購入・構築費などの初期費用もかからず、容易にDXを図れるとしている。
同社は新サービスの開発に当たり、マザー工場である湘南工場(神奈川県・寒川町)で検討を重ねた。このシステムを導入した結果、作業時間を縮められた他、誤記入や転記ミスも減ったという。さらに検証を続けて、巡回点検や修理記録などのさまざまな用途に運用範囲を広げる計画だ。
同社は新サービスを、サブスクリプション形式で提供する。課金はユーザー単位で、1ユーザーからの契約が可能。正式版の月額利用料は、IDライセンス1件当たり5000円(税別)を予定している。プレビュー版で収集したデータは、正式版に切り替えた後も引き継がれる。