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 新型コロナウイルスの感染拡大によって社会活動や経済活動に多くの制約が出ているが、社会貢献としてコロナ禍からの回復に役立つ特許を無償開放する動きが出てきた。工学分野で数多くの特許を有する東京工業大学は、コロナ対策関連の事業に対しては無償許諾することを決め、2020年5月1日に131件の特許リストを公開した。企業と大学で一緒に研究開発に取り組むオープンイノベーションとしての活用を期待しているという。特許利用の申請は2021年2月28日まで。最長で2022年12月31日まで無償使用できる。無償実施許諾申込書をホームページからダウンロードし、必要事項を記入の上、申し込むことができる。

本プロジェクトを包括する社会再起動技術推進事業
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本プロジェクトを包括する社会再起動技術推進事業
(出所:東工大 研究・産学連携本部ウェブサイト https://www.ori.titech.ac.jp/socialreboot/)

 プロジェクトリーダーを務める東京工業大学 オープンイノベーション機構 副機構長・統括クリエイティブマネージャー 教授の大嶋洋一氏は、「大学の研究活動が止まっている現状において、新型コロナに対する社会貢献として何ができるかを考えて、まずは特許の無償提供を企画した」という。

 公開した特許について大嶋氏は、「許諾に時間のかかる企業との共願案件などを除き、すぐに運用できる単独帰属の案件から公開した」。「どのような特許が新型コロナ対策に有効か、我々の知見だけでは分からない」(大嶋氏)ため、分野に制限を設けず、化学から情報通信、機械に至るまで幅広い領域の特許を対象にしたという。中には新型コロナ対策に関係なさそうなものも含まれているが、有用と思われるものも少なからずある。例えば、「廃炉現場などで使われているロボットは、ウイルス汚染の激しい場所で生かすことができるだろうし、プラズマを使った殺菌もコロナ対策に有望な技術ではないか」(大嶋氏)と話す。

大嶋洋一氏
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大嶋洋一氏
(出所:本人提供)

 大嶋氏によると、無償開放の特許数は東工大が持つ全特許の約1割にあたる。本来、大学所有の特許は、運用の際に発明者の許諾が不要で、学校側の判断で自由に使える。しかし、発明者の意思を尊重するため彼らに確認を行ったという。すると、「このような場面で技術が役に立つなら、ぜひ使ってほしい」と賛同を受けることが多かったと話す。「研究者の方も、社会貢献をしたいというマインドがあることを実感できた」(大嶋氏)。

 無償利用の範囲を海外の企業や研究機関にまで広げることも現在検討中である。「すでに海外から無償開放リストの英訳版はないかとの問い合わせが来ている」(大嶋氏)という。さらには、無償開放リストに海外大学保有の特許をジョイントすることも目指している。「本プロジェクトに賛同する海外の大学に呼びかけ、彼らの特許をリストに加えられれば、とても厚みが増してくる」(大嶋氏)。

 特許公開と並行して「COVID-19 関連研究収集プロジェクト」も進めている。こちらのプロジェクトは、新型コロナに関連する東工大の論文や研究資料をデータベース化しようという取り組み。外部の研究者からのコンタクトを増やす狙いがある。「ウイルス用のセンサーや、医療機器のデバイスといったコロナ対策に役立つ本学の知見を共有したい」(大嶋氏)という。

 大学での研究活動再開後には新型コロナ対策に向けた大学発の技術の開発にも取り組む計画だ。このほか、「学生からのコロナ対策技術のアイデア募集」なども検討している。