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 欧州で自動車アセスメントを手掛けるEuro NCAPは2020年5月20日、試験プロトコルの変更を発表した。Euro NCAPは、現実の事故状況や新たな安全技術に対応するため、2年ごとに試験内容や方法を見直している。今回は、長年のニーズであった走行中の車両同士の衝突を想定した「移動オフセット前面衝突試験」を加えたほか、先進運転支援技術(ADAS)の進化に対応したいくつかの新試験や、衝突した後の乗員救出性能を評価する基準などを採り入れた。

今回の見直しで導入した新試験
今回の見直しで導入した新試験
(写真:Euro NCAP)
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 欧州の事故データを見ると、正面衝突は他の事故タイプより死亡者や重傷者が多く、その中でも対向車と高速でオフセット衝突する事故が最も多い。今回追加した、走行する車両同士の衝突を想定した試験は、過去23年に渡って使用してきたオフセット前面衝突試験に代わるもの。止まっている障壁ではなく、移動する変形可能な障壁(MPDB)と車両を衝突させる。50km/hで走行する車両に対し、車両前面の運転席側の半分に50km/hで移動する障壁が衝突する。試験で用いる障壁は、1400kgのトローリー(台車)に中型のファミリーカーの前端を模した変形可能な障壁を取り付けた。

MPDBと呼ばれる移動障壁
MPDBと呼ばれる移動障壁
(写真:Euro NCAP)
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 試験車両では、前席に成人男性のダミー人形を座らせ、後席にはチャイルドシートを設置し子供のダミー人形を座らせる。このダミー人形は米NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が開発した「THOR」と呼ばれるもの。骨格や関節部分などが人体に近く再現され、衝撃の当たった角度や加速度などを計測できるセンサーを多く搭載している。この試験では平均的な体格の成人男性を模した「THOR-50M」を使う。

 死傷者や重傷者が発生しやすい事故の2番目は側面衝突だ。側面衝突試験は、障壁衝突における速度と質量が調整され、試験の厳しさが増した。さらに衝突された側に座るドライバーを対象としたニアサイド保護性能だけでなく、助手席乗員を対象としたファーサイド保護性能の評価が加わった。

 運転席側に側面衝突された場合、ドライバーは助手席側に倒れ、助手席乗員の上半身はドライバー側に倒れる。そのため、頭部同士や頭部と肩などが激しく当たって重傷になることがある。ファーサイド衝突試験では、こうしたドライバーと助手席乗員との相互作用に焦点を当てる。また、新製品のセンターエアバッグの保護性能を十分に検証できるようになる。